2023/2/19 9:00     島田拓空也 映像作家
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日本では亡くなった人の99.99%が火葬され、「火葬大国」とも呼ばれる。一方、この国で暮らす人たちの中には、墓地がなくて困っている人が増えてきた。その教えにより土葬が求められているイスラム教徒やカトリック教徒たちだ。地域住民の反対などで土葬墓地を新設するのが難しい中、京都府南山城村の高麗寺は2022年2月から国籍・民族・宗派を問わず、土葬の受け入れを始めた。その中心となったのが、寺の代表役員を務める崔柄潤さん(82)だ。在日韓国人2世として育った崔さんは、国籍を理由に就職を拒否されるなど、数々の差別を受けてきた。「差別された人間が差別をしたらあかん。人間死んだら国籍も民族も関係ない」。こんな思いで土葬を受け入れる崔さんがめざしているものとは。


●「土葬ができなくて困っている人が」
高麗寺は、奈良、三重との県境に近い山間部にある韓国系仏教の寺院だ。5万坪の広大な境内に霊園を所有する崔さんが土葬を受入れようと考え始めたのは、法岳光徳住職から聞いた一言がきっかけだった。「崔代表、日本には土葬ができなくて困っている人がいるらしいですよ」

在日韓国人2世の崔さんは、子どものころは母親が持たせてくれた弁当箱を隠していた。弁当箱を包んでいた新聞紙のハングルを見られるのが恥ずかしかったからだという。就職活動では、学科試験を優秀な成績で通っても韓国人であることを理由に採用されなかったことがある。担任の教師には「韓国籍のままではお前の能力が正当に評価されずもったいない。早く帰化しろ」と熱心に勧められたが、それはできなかった。「帰化してしまうと、自分自身に敗れたような気がして、どうもプライドが許しませんでした」と崔さんは振り返る。その後、手に職をつけるため、父の知り合いの車の整備会社に入社した。いまは27歳の時に自ら起業した「長守モータース」の社長をしている。

その崔さんが、日本にはほとんどない土葬墓地をなぜつくることにしたのか。「過去に差別を受けた人間が、今度は誰かを差別しようなんて考えたらダメなんです。だからこそ今、差別を受けている人の助けになれればと思ったんです」

●近隣住民の懸念が土葬の壁に
現代の日本の葬送は、99.99%が火葬だ(2021年、厚生労働省衛生行政報告例)。一方、死後の復活を信じるイスラム教徒らにとって、土葬は絶対的だ。日本国内には約20万人のイスラム教徒がいると推定される一方、土葬を受け入れている霊園は2021年には全国で9カ所しかなかった。2022年には高麗寺霊園と広島県三原市の霊園が新たに受け入れを始めたが、その数は圧倒的に不足している。

歴史をさかのぼれば、日本でもかつては土葬が主流だった。神道の伝統的な埋葬方法は土葬であり、明治時代には火葬が禁止されていた時期もある。しかし、土地に限りがあることや衛生上の懸念から、戦後は火葬の割合が徐々に増えていった。土葬は今では京都や奈良、三重の一部の村でしか行われなくなった。

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