福岡の老舗旅館の大浴場で、基準値の3700倍のレジオネラ菌が検出され、利用者の方がレジオネラ症を発症していました。条例で週1回以上とされていた湯の交換を、年2回しか行っていなかったということです。

温泉好きの方は多く、今回のことで、不安を感じられた方も多くいらっしゃるのではないかと思います。わたくしは、厚労省で旅館業法・公衆浴場法等を担当していた経験から、率直に言って、こうしたことは、この旅館だけではないだろうという懸念とともに、なぜ規制を守れない施設が多くあるのか、といった点についても、利用者の健康を守るという観点から、改めて考えてみたいと思います。

レジオネラ症について
今回の旅館の社長は、レジオネラ属菌を「大した菌ではないと思っていた」と述べました(3月29日記者会見)が、決してそんなことはありません。

▽レジオネラ症とは?

レジオネラ属菌は、自然界(河川、湖水、温泉、土壌など)に生息している細菌で、感染すると、肺炎を引き起こす場合があり、重篤化し死亡するケースもあります。我が国でも毎年50-70名程の死亡が報告されています。高齢者や新生児、喫煙者や透析患者、免疫機能が低下している方等は、レジオネラ肺炎のリスクが高いとされ、注意が必要です。

レジオネラ症は、感染症法上の4類に分類されており、全数報告対象で、毎年2000件前後の報告があります。

レジオネラ症の潜伏期間は2~10日で、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難等が見られるようになります。

▽どうやって感染する?

レジオネラ症は、レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)の吸入等によって、感染して発症します。レジオネラ属菌は、ヒトからヒトへ感染することはありません。代表的なエアロゾル感染源としては、冷却塔水、加湿器、循環式浴槽などが報告されています。温泉浴槽内や河川で溺れた際の汚染された水や、土壌の粉塵を吸引・誤嚥したこと等による感染事例も報告されています。

▽予防するには?

風呂(自宅・共同浴場等)での感染を予防するには、何よりも湯をこまめに換え、浴槽などを清掃することですが、循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24時間風呂等)を備え付けている場合も、浴槽内の汚れや細菌で形成される「ぬめり」が生じないよう、定期的に洗浄等を行い、レジオネラ属菌が増殖しやすい環境をなくすことが大切です。

今回の旅館のケースは、どうなる?
今回の旅館は、換水や消毒について、条例で定められたルールを守らず、そして、行政に対して虚偽の報告をしていたということでした。

つづき
https://maidonanews.jp/article/14851269