2年目に突入したウクライナ戦争。ウクライナは、春の大攻勢に向けて、西側のさらなる支援を求めている。中でも、切望しながらも叶わないもの、それが、長距離攻撃能力だ。西側から、戦闘機の供与は表明されている。しかし、操縦訓練が必要なため、実用は早くても秋以降といわれる。残る頼みは、射程の長いミサイルだが、アメリカが新たに供与を表明した『GLSBD』でも150km射程。これでは、クリミアのロシア軍基地も、港も、クリミア橋も攻撃できない。そんな中、驚くような計画が進められていた…

「近くまで飛んで行って発射すればクリミア半島全域をカバーでき、ゲームチェンジャーになりうる」
長距離攻撃能力が求められる中、イギリスが供与を発表した『ストームシャドウ』。射程250㎞という長距離射程の巡航ミサイルだ。命中精度が高く、ステルス性能まで備えているという。しかしこれ、空中発射型ミサイルだ。つまり、戦闘機に搭載して、空から発射しなければならない。これでは、西側戦闘機の導入を待たなければ使えない。ところが、ここに奇策があった。

イギリス製のミサイルを、ウクライナ軍が扱い慣れている、旧ソ連製の航空機に搭載しようというのだ。ウクライナには、ミグ29戦闘機や、スホイ24爆撃機など111機の旧ソ連機があるが、当然、そのままイギリスのミサイルを搭載できるはずはない。果たして、どうやって搭載するのだろうか?

英国王立防衛安全保障研究所 日本特別代表 秋元千明氏
「これは、ウクライナが求めている戦闘機と長距離射程兵器、2つの供与をパッケージにした、一石二鳥のアイディア。イギリスのスナク首相が言い出した」

先週、ミュンヘンで、スナク首相は「イギリスは、ウクライナに長距離兵器を提供する最初の国になるだろう」と述べている。

英国王立防衛安全保障研究所 日本特別代表 秋元千明氏
「NATO諸国は、かなり、ミグ戦闘機や、スホイ爆撃機を所有してるんです。特にスロバキアとポーランドは今、新しい戦闘機への更新が進んでいて、古いものはいらない。スロバキアに関しては、2022年9月から、領空の防衛はポーランドやチェコに移管している。なので余剰戦闘機なんです。さらに、既にNATOの近代化改修というのを行っていて、NATO兵器を取り付け易い状態になっていて、わずかな改修を加えれば、(すぐ乗りこなせる)戦闘機も供与できるし、『ストームシャドウ』を搭載することもできる。さらに、ウクライナが保有している、旧ソ連製の戦闘機も同じで、これには、イギリスのエンジニアを、ウクライナに派遣して改修作業を進めています」

これは単に『ハイマース』よりも『ストームシャドウ』の射程が長いということではなく、戦闘機で、占領された地域近くまで進出して発射できるため、攻撃範囲は格段に広がる。ウクライナにある戦闘機を改修するだけでなく、すでにストームシャドウ搭載可能になった戦闘機を送る選択もあるのだ。

英国王立防衛安全保障研究所 日本特別代表 秋元千明氏
「例えば、クリミア半島の近くまで飛んで行って発射すれば、クリミア半島全域をカバーできる。そういう意味では、ゲームチェンジャーに成りうると思いますね」

「NATO、羨ましいなぁ…」
ポーランド首相はすでに、ミサイル搭載用に改修した旧ソ連機を、61機供与する用意があると表明。11機を提供するスロバキアの首相は「ウクライナを救うのは、国内で退役したミグ戦闘機だ」と語った。こうした支援を加速させているのは、“NATO領空警備”という規定と、東欧で進む“西側戦闘機への置き換え”だ。

スロバキアの領空の防衛がポーランドとチェコに移管されたように、NATOでは、戦闘機保有国が、非保有国の領土を守る集団防衛の枠組みを設けている。更に、東欧諸国では、所有していた旧ソ連製戦闘機を、次々退役させている。ポーランドはすでに、アメリカ製F-16を48機保有していた。