有権者がウェブ上の設問に答えると、自身の考えに近い政党や候補者が表示される「ボートマッチ(投票マッチング)」。政策に対する候補者らの立場を比較できる仕組みとして、近年利用が広がっている。ただ、東京都杉並区選挙管理委員会が4月の統一地方選で行われる区議選で、若い世代の投票率向上を目的に導入を目指したところ、総務省が「公職選挙法に抵触する可能性がある」と指摘。全国初の「官製ボートマッチ」には待ったがかかった。

 選挙に関するポータルサイト「選挙ドットコム」の担当者によると、ボートマッチは1980年代からオランダなどで広まった。日本でも近年、国政選挙や地方の首長選などで、民間団体や報道機関が実施するケースが増加。同サイトが2021年の衆院選で行ったマッチングは延べ約350万人が利用した。

 若年層の投票率低迷に危機感を抱いてきた杉並区選管は、区議選への関心を高めてもらおうとボートマッチに着目。具体的な質問項目を検討するなど、専用サイト開設へ準備を進めてきた。

 しかし、有権者が特定の候補に誘導される恐れがあるとして区議らが問題視。総務省が2月、都道府県選管に出した通知で、選管主体のボートマッチは「啓発・周知活動の範囲を超え、全候補者の平等公正な取り扱いを担保するのが困難」で、公選法抵触の恐れがあるとの見解を示し、区選管は断念に追い込まれた。

 ボートマッチに詳しい松本正生埼玉大名誉教授は「自治体がよく踏み切ったと注目していたが残念。法律の解釈について慎重に確認する必要があった」と指摘する。

 一方、総務省は民間主体で行うボートマッチは問題ないとの見解も示した。松本氏は「地方議員選では候補者の政策が前面に出ず、住民が自治体の課題を認識していないことも多い。地方選でもメディアなどが取り組む芽が出てくれば」と話している。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023031400704&g=pol