レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、日本の原付1種が世界で最も多く輸出されている国はアメリカだと言います。どういうことなのでしょうか?

なぜアメリカへ原付1種を!?
 僕(筆者:木下隆之)は日本自動車工業会が公開している資料をペラペラめくっていて、ハッと手が止まりました。生真面目な数字とグラフが並ぶ、社団法人発行のデータ「輸出台数構成比」の中の、さらに「2021年二輪車仕向地別輸出台数」を深掘りしてみると、「原付1種」がもっとも多く輸出されたのがアメリカとの数字を発見したのです。

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原付1種のホンダ「クロスカブ50」(左)と「スーパーカブ50」(右)

 原付1種とは、つまり道交法で言うところの排気量50cc以下のバイクです。現行モデルではホンダ「スーパーカブ50」や「タクト」などが含まれますが、ヤマハやスズキ含め日本メーカーのモデルラインナップからはことごとく数を減らしています(カワサキはもともと無い)。僕の愛車「モンキー50」もそのうちの1台。

 原付1種は日本の規格でしょうし、そもそも国土の狭い日本の街並みにベストマッチするバイクです。それが、広大な国土を有するアメリカへの輸出が最多だなんて、信じられないのです。

 しかも驚きは、アメリカへの輸出が突出していること。1万5710台もの原付1種が北米大輪に上陸しています。それは仕向地ではぶっちぎりの数字なのです。

 アメリカに次いで、フランスが一桁少ない2808台、オーストラリアが2469台、カナダが1643台となっています。フランスの都市部は広くはないので、原付1種は重宝されるかもしれませんが、アメリカやオーストラリア、カナダといった大陸的な国に輸出されているのは、じつに不思議です。

 アメリカと言えば、ハーレー・ダビッドソンが国の象徴的存在。大陸を横断するルート66のある国です。そんな大陸を最高出力4馬力前後の「原チャリ」がテケテケと走るなど、にわかに信じられないのです。

 アメリカ人は平均的に巨体です。フランス人もカナダ人も同様で、オーストラリア人も例外ではありません。排気量50ccの原チャリで、巨漢を乗せて加速させることができるのでしょうか?

 ちなみに軽四輪、つまり日本規格である黄色ナンバーの「Kカー」(軽自動車)は、アメリカには1台も輸出されていません。フランスもカナダもオーストラリアも、輸出台数は「0」です。

 全長3.4m以下、全幅1.78m以下、全高2m以下、排気量660cc以下が軽四輪の規定です。広大な大地に恵まれた国では、コンパクトであることのメリットがないのでしょう。しかし、原付1種は販売されている……。

 もしかして、市街地では50ccにメリットがあるのでしょうか。スーパーカブのような耐久性に優れた原付1種は世界的にも稀でしょうから、アメリカ人も好むのでしょうか?

 僕の中の七不思議です。近いうちにその理由を解明して報告したいと思います。楽しみにお待ちください。

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