3/25(土) 11:58   日刊ゲンダイデジタル
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「必勝しゃもじ」がかつてない逆風にさらされている。岸田首相がウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領に直接会った際、地元・広島の名産品として贈呈したからだ。1年以上もロシアの侵略にさらされる戦時大統領に必勝グッズを贈る見識のなさ。物見遊山気分だったのはバレバレ、非難を浴びて当然だ。

岸田首相キーウへの手土産は“キシダノシャモジ” SNSではアベノマスク超えの愚行と笑いもの

「外交の慣例として地元名産のお土産をよく持っていく」「ウクライナの方々は祖国や自由を守るために戦っている。こうした努力に対して、我々は敬意を表したい」──。24日の参院予算委員会で、岸田首相は「必勝しゃもじ」の贈呈についてこう釈明し、理解を求めた。野党議員から「戦闘は選挙やスポーツ競技ではない」「不適切ではないか」などと追及されてもピンとこない様子で、必勝祈願の趣旨については「私から申し上げることは控える」とゴマカした。

 平時の外遊ならまだしも、侵略されている戦争当事国に「必勝しゃもじ」を贈る能天気ぶりに、ツイッター上は〈理解に苦しむ〉〈感覚が異常〉などと大荒れ。きのうはツイッター上で「必勝しゃもじ」が一時、トレンド入りした。

 岸田首相が贈呈したしゃもじは50センチ大で、「必勝」の文字と共に「岸田文雄」の署名入り。岸田首相一行がキーウ入りの際に列車に積み込んだ「うまい棒」の段ボールに梱包されていたとみられる。国際ジャーナリストの春名幹男氏がこう言う。

「2016年、当時のオバマ米大統領が現職として初めて被爆地・広島を訪問した際、4羽の折り鶴を持参して話題になりました。県民をはじめ、日本国民の琴線に触れる贈り物だったと思います。贈られる側の気持ちや立場を考えていたからこそ、出た発想でしょう。かたや岸田さんはどうか。ウクライナの風習・文化は脇に置いて、とりあえず『外交慣例』として『地元名産品』を贈った。思慮の浅さ、押し付け感が否めません」

ロシアは挑発行為とカンカン
勝利で一致(ウクライナのゼレンスキー大統領)/(C)ロイター

 宮島の伝統工芸品であるしゃもじは縁起物だ。しゃもじ作りで有名な「宮島工芸製作所」に聞くと、「『必勝』は野球の応援グッズなどで使われ、1番人気は『商売繁盛』」(担当者)とのこと。しゃもじ贈呈が話題になっているが、「一般のお客さまからの問い合わせが増えたわけではない」(担当者)と言う。

 しゃもじには「敵を召し(飯)捕る」との語呂合わせから、日露戦争などで兵士が必勝祈願としてしゃもじを厳島神社に奉納していた歴史がある。ロシアはしゃもじ贈呈に敏感に反応し、国営タス通信は「必勝しゃもじ」を「日露戦争時の兵士のお守り」と強調。「奇妙なプレゼント」と伝えるなど、挑発行為と捉えたようだ。

 ひるがえって日本国内では、しゃもじ贈呈を「ロシアへの強力なメッセージになった」と肯定的に捉える連中もいるが、戦争を煽ってどうする。

 岸田首相はゼレンスキーに広島の焼き物「宮島御砂焼」で作られた折り鶴をモチーフとしたランプも贈っている。G7サミットの開催を地元にしたのもそうだし、岸田首相の頭の中は広島宣伝で「故郷に錦を飾る」ことだけ。サミットでは何を配る気か。