「元徴用工騒動」のウラで“起きていたこと”
元徴用工問題が大きく動き出した。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が提示した「韓国財団の肩代わり案」が、いよいよまとまりそうだ。2023年3月16日から17日には尹大統領が来日し、日韓正常化に向けた大きな節目を迎えた。

元徴用工問題は“上手くいけば”これで万事解決するだろう。ただし、これはまだまだあくまでも仮定の話だ。

というのも、日本政府に賠償と謝罪を訴えてきた被害者と主張する人たちの一部は尹政権の案に納得していないし、彼らを支えてきた市民団体も政府案に反対している。そのため、慰安婦問題の二の舞になる可能性も残されている。

数日前、元徴用工問題に関する報道を見た筆者の母親が「そういえば、最近は慰安婦問題は静かね。やっぱり代表が起訴されたからかな」などとのんきなことを言っていた。

実は、挺対協(現:正義連)の前代表で、寄付金横領などの罪で起訴された尹美香(ユン・ミヒャン)氏は、元徴用工問題に便乗してか、2023年3月8日に3年ぶりに水曜デモに返り咲いている。そこで彼女は「(政府の解決案は)日本に頭を下げた降参宣言にすぎない」と尹政権を批判したのだ。

彼女は元徴用工問題を利用して再起を狙っているのだろう。

その尹美香氏を告発し、水曜集会と決別したはずの李容洙(イ・ヨンス)氏も、尹美香氏の1週間前に水曜集会に復活している。

韓国側の「要求」を聞きすぎている…?
韓国政府はというと、元徴用工問題の解決と引き換えに、日本政府にホワイト国(現:グループA)への復活を求めるようだ。加えて、日本では韓国の経済団体とともに資金を拠出し、留学生への奨学金事業基金をつくるとも報じられている。

私が懸念するのは、日本政府は韓国側の要求を聞きすぎてはいやしないかということだ。これらは元徴用工問題とは何ら関係のないことのはずだ。

こうした要求を日本側が受け入れるのであれば、せめて「韓国海軍レーダー照射問題」に対する謝罪を韓国政府から受けてほしいと思うのは私だけだろうか。日米韓の連携強化を図るのであればなおさらだ。

前置きが長くなった。慰安婦や元徴用工といった問題は、韓国で生活を送っていると身近に感じるようになる。筆者の場合、かつての職場がデモの頻発地域付近だったことも、この問題に関心が傾く要因となった。

日韓問題はナイーブな問題だから、筆者から他人に政治的話題を持ちかけることはあまりしない。だが、韓国内でも日本人同士で集まると必然的に会話が時事問題になるから、日本人間での意見交換は活発だ。

また、韓国のタクシー運転手は客が日本人で韓国語ができると分かると、結構な確率で「独島(竹島の韓国名)はどちらの領土だと思うか」「日本人は安倍が本当に好きなのか」「慰安婦問題や元徴用工問題についてどう考えるか」などと尋ねてくる。

かつて参加した韓国人との交流会などでも、興味本位で同様の質問を投げかけてくる人が多かった。筆者の肌感覚では、韓国の若者のほうが日本の若者よりも政治に敏感だし、韓国人のほうがダイレクトに問うてくる人が多い。