「うるせぇ、帰れ!」2700人を看取った医師が絶句…元製薬会社研究員の62歳夫が末期がんの愛妻に”民間療法”を試しまくった「涙の理由」

4/1(土) 9:02     現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/f60c608bafab9827216d3e3ae6cf0fc341477508?page=1


 茨城県つくば市で訪問診察を続ける『ホームオン・クリニック』院長・平野国美氏は、この地で20年間、「人生の最期は自宅で迎えたい」と望む、多くの末期患者の終末医療を行ってきた。5500人以上の患者とその家族に出会い、2700人以上の最期に立ち会った医師が、人生の最期を迎える人たちを取り巻く、令和のリアルをリポートする――。

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患者の痛みに寄り添えた医療を行えているのだろうか?
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 我々医療者は、インチキ健康食品やトンデモ医学に負けてしまう事がある。特に終末期を迎えたがん患者にそれは多い。インチキとトンデモ達は余命幾ばくも無い患者とその家族に群がり、甘い言葉をささやいては、患者の財産とQOLを奪っていく。

 医師を志す者たちは、医学生の頃から「患者の痛みの分かる医者になれ」と何度も言われ続けて医者となったはずだ。しかし一体、どれだけの医者が、その言葉を胸に刻んで今日も診療に臨んでいるだろうか。インチキとトンデモに騙される患者が未だにいる中、これで本当に患者の痛みに寄り添えた医療を行えていると言えるのだろうか。

 ある時、その問いを私は患者の夫に突きつけられた――。これは私の苦い経験である。

 患者は元高校教師の平山幸子さん(仮名・60歳)。喫煙者ではなかったが、肺癌に冒された。手術と抗がん剤療法を行ったものの、効果が見られなかったため、在宅で緩和療法を行っていきたいという依頼だった。

 彼女の介護者は夫の茂一さん(仮名・62歳)。元製薬会社の研究員で、名門大学の薬学部を出た博士である。

 しかし診察の依頼は、この二人からではなくて、同じ市内に住む長女からの依頼だった。患者夫婦は、私が訪問診療でこの家に入る事を、納得していないのだという。電話口の娘さんは必死に訴えてきた。

 「父は悪い人ではないんです。ただ、母の病気で性格が頑なになってしまったんです。初診日には私も立ち会って父を説得しますので、なんとかお願いしたいです」

 まずは直接、患者から話を聞いてみる事にした。

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