完敗後も止まらなかった「暴走」
先週の本コラムでは岸田首相のウクライナ訪問をとりあげたが、3月20日まで3週続けて書いてきた「小西文書問題」はその時点で終結していた。

3月20日以降の動きを書けば、3月22日に総務省はさらなる精査結果を公表した。これが事実上の最終結果だ。

そこでは、「5月12日以前に放送法第4条の解釈に関する大臣レクがあったかについては、関係者間で認識が分かれており、確認はできなかった」、「作成者及び同席者のいずれも、この時期に、放送部局から高市大臣に対して、放送法の解釈を変更するという説明を行ったと認識を示す者はいなかった」とあり、レクメモの正確性と信頼性に疑問を呈している。これは3月初め以降、本コラムで書いてきた筆者の見立てと同じだ。

24日の国会審議でも、石垣のりこ参院議員(立民)の高市大臣罷免要求に対し、岸田首相は小西文書の正確性が確認できないので、更迭はあまりに論理飛躍だと一蹴した。

立民は参院予算委員会で高市大臣の追及をしてきたものの、結果として高市大臣の問責決議すら出せないまま予算案は28日参院を通過した。これで、政治的には高市氏の完勝、小西氏の完敗となった。

ところがこれがよほど悔しかったのか、小西氏の暴走は止まらなかった。29日、参院憲法審査会の理事懇談会後、記者団に対し「参議院では、毎週開催はやらない。毎週開催は、憲法のことを考えないサルがやることだ。何も考えていない人たち、蛮族の行為で、野蛮だ」と述べた。

これに対し、立民の泉代表は、31日に小西氏を参院憲法審査会筆頭理事から更迭した。

更迭された31日の記者会見で、小西氏は再度「しでかした」。謝罪会見という形だったが、会見後にとんでもない光景があった。産経記者がスマホ画面を示すと小西氏は「やったら全部法的措置とりますから」と語り、「書いたら法的措置をとる?」という問いかけに「とりますよ。もう厳しくやります」小西氏は答えたのだ。まさに、マスコミに対する「圧力」ではないか。

ここまで来ると、小西氏に好意的で高市大臣に批判的だったリベラル系マスコミも一斉に小西氏を批判するようになった。

小西氏はこの過程で「元放送政策課課長補佐に喧嘩を売るとはいい度胸だと思うが」とかマスコミが飛びつくことまで言っている。小西氏は、身をもって放送法の重要性をわからせてくれる、トリックスターのようだ。

国交省元次官の圧力
ただし、小西文書が国会で議論になっている間、重要な問題がスルーされている。

その一つが天下り問題だ。国交省元次官の企業人事介入問題が報道された。

国土交通省の元事務次官が昨年12月、羽田空港などの施設管理等を行う「空港施設」(空港法に基づく指定空港機能施設事業者)に対し、国交省OBの副社長を今年6月に予定されている役員人事で社長に昇格させるよう求めていた。同社の乗田俊明社長が3月30日に明かしたところでは、元次官の本田勝・東京メトロ会長から「(国交省OBが社長に就任した場合は)国交省としてあらゆる形でサポートする」と持ち掛けられたという。乗田社長らは、同社は上場会社であり、取締役候補者は指名委員会で決める手続きになっているとして要求に難色を示した。

「空港施設」は1970年2月の設立以来、国交省OBらが社長に就任しており業界では天下り会社として有名だったが、菅義偉政権中の2021年6月に日本航空(JAL)出身の乗田氏が初めて民間から社長に就任していた。乗田氏は「私の前までは国交省出身の方が社長を務めていたので、そういうこと(意向)かと受け止めた」という。

ありえないガバナンス違反の背景
元次官の本田勝・東京メトロ会長は、国交省OBを社長に昇格させるよう求めたことを認め「軽率な行動によるもので、反省しなければならない」と述べたが、国交省現役職員の関与は否定した。

なお、国交省人事課は「省として関与していない。上場企業である民間企業の役員人事に対し、コメントする立場にもない」としている。