4/8(土) 8:46     女子SPA
https://news.yahoo.co.jp/articles/3673e8dfdd6ff4f52beb77a4ced472321c83647d

 近年、トランスジェンダーという言葉を聞く人は増えたのではないでしょうか。トランスジェンダーとは、生まれたときに法的に登録された性別とは異なる性別を生きている人のことです。

 トランスジェンダーについて発信する人が増えている一方、TwitterなどのSNSを中心に差別的な投稿も見受けられます。

 また、「心が女性だと言えば、女湯や女性トイレに入れるようになってしまうのでは?」のような、トランス女性(生まれたときに法的に登録された性別とは異なるものの、現在は女性という性別を生きている人)のスペース利用をめぐる議論が絶え間なく行われています。

 インタビュー前編では、群馬大学准教授であり、『トランスジェンダー問題――議論は正義のために』(ショーン・フェイ著)の翻訳者でもある高井ゆと里さんに、トランスジェンダーの人たちに立ちはだかる問題について話してもらいました。

 今回は、SNSなどにおけるトランスジェンダーの議論や女性用スペースのことなどについて聞きました。

止まらない女性用スペースをめぐる議論
――SNS上では、トイレや温泉など、「トランスジェンダーの人々の共同スペースの利用」についての発信を多く見ます。それについて、どのように考えていますか?

高井:当事者のおかれている状況を理解しないまま、当事者不在の議論が行われていると感じます。トランスジェンダーとひとくくりにしても、さまざまな人がいます。たとえば、トランス男性(生まれたときに法的に登録された性別とは異なるものの、現在は男性という性別を生きている人)でも、すでに男性として生きている人だけでなく、「できれば男性として社会生活を送りたいが、周囲からは女性として認識されている」「これから身体を男性的に変えたいと思っている」など、一人ひとりの状況は異なるのです。

そんななか、例えば条例や学校・会社の規則でトランス男性は女性トイレしか使えないと決めてしまうと、すでに周囲から男性として認識され、男性として社会生活を送っているトランス男性は男性トイレには入れなくなります。「使えるトイレがない」という状態へと追いやられてしまうのです。

――なかでもトランス女性の女性用スペースをめぐる問題は、Twitterでも多く見かけます。

高井:トランス女性が女性用スペースを使うべきかどうかの議論がされるとき、ほとんどの人がイメージしているトランス女性というのは、“心は女性だと言っている男性の見た目をした人”なんですね。

ですが、先ほども言ったようにトランスジェンダーのなかにもさまざまな状況の人がいて、当事者には男性用・女性用どちらのトイレを使うかの選択肢はありません。男性として社会で過ごさせられているトランス女性は、現実には多目的トイレと男性トイレしか使えませんし、女性として社会で過ごしているトランス女性は女性トイレしか使えないのです。

――共同スペースの利用について、当事者はどのような問題に直面しているのでしょうか?

高井:友達に旅行に誘われても、着替えやお風呂を共有するのが嫌だから1人だけ行けなかったりすることがあります。また突然の災害で避難所生活を余儀なくされると、衛生状況を保つためにどうしても他の人と共同のお風呂を利用するほかありませんが、それが叶わないために、避難すべきタイミングで避難ができなかったりします。多くのトランスジェンダーが、そもそも公衆浴場に入ることができていないことを忘れないでください。

SNS上では「トランスジェンダーの差別がなくなったら、女性・男性ですと言えば誰でもそのスペースに入れてしまう」という意見があります。ですが、入れるトイレ、入れるお風呂がなく困っているトランスジェンダーが多くいる現実を知れば、その議論自体が誤っていることがわかるかと思います。

それに悪意を持って女性トイレや女湯に入る人たちは「トランス女性」ではありません。まったく別の人たちの話を持ち出していることに気づくべきです。

次ページは:著名人の発言が当事者にマイナスの影響を与えることも

続きは上記リンク先をご覧ください