https://www.dailyshincho.com/wp-content/uploads/2023/04/2304181450_1-714x682.jpg
米機密文書がSNSで流出、拡散した問題で漏えいに関わったとして、東部マサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者を逮捕(2023年4月13日)

 BBC NEWS JAPANは4月12日、「韓国、ウクライナへの武器供与で葛藤 流出した米機密文書に記述」の記事を配信した。アメリカの機密文書がSNSで流出、拡散した問題で、BBCが韓国政府の内部情報が記載された文書を確認したという内容だった。

 ***

 BBCが文書を確認すると、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(62)の上級顧問2人が3月1日に行った会話が傍受されていたことが分かったという。

 ちなみにBBCは《通信》を傍受したとしか書いていないが、読売新聞オンラインは《電話や電子メールなどを通信傍受》した可能性を指摘している(註)。

 2人の上級顧問は何を話していたのか。それはアメリカへの砲弾提供に関する問題だったという。

 韓国紙の東亜日報は4月12日、「韓国はアメリカに155ミリ砲弾を50万発、アメリカに貸与することで合意した」と報じた。

 アメリカはウクライナに砲弾を供与しているため、国内の備蓄が減少している。アメリカは昨年も韓国から10万発の砲弾を購入していた。

 ところが3月の米韓合意は「売却」ではなく「貸与」となった。これはウクライナ戦争で韓国の砲弾が使われる可能性を最小限に抑えるため、と東亜日報は伝えた。

 話を機密文書に戻すと、登場するのは金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長と、李文熙(イ・ムンヒ)外交秘書官の2人。ちなみに肩書は当時のもので、3月に金氏は室長を辞任し、李氏は外交秘書官を交代させられた。

 昨年、韓国が砲弾をアメリカに売却した際にも、《ウクライナに転送しないよう》求めたほど、この問題には神経を尖らせている。

 流出した文書で金氏と李氏は、《アメリカが砲弾の最終使用者にならないのではないか》、《韓国がウクライナへの武器供与の方針を変更すればアメリカの圧力に屈したように見える》──こんな懸念について話し合っていたと記録されていたそうだ。

CIAと旧KCIAの関係
 諜報機関が敵国の情報を入手しようと血眼になるのは分かるが、アメリカは同盟国にも同じことをするのか──こんな疑問を抱いた新聞社も少なくなかったようだ。

 4月11日、産経新聞電子版は「同盟国も通信傍受…米機密文書流出の衝撃波」、朝鮮日報電子版は「『同盟国の通信を傍受』 米機密文書流出で波紋…背後にロシアがいるとの疑惑も」との記事を配信した。

 だが、世界のインテリジェンス事情に詳しい国際ジャーナリストの山田敏弘氏は「アメリカが同盟国に対しても諜報活動を行っているのは、関係者の間では常識です」と言う。

「もちろん人員も予算も限られているので優先順位があります。CIAのリクルート状況を見ても、中国語、韓国語、ペルシャ語などができる人は重点的にリクルートされています。アフリカの小国相手となると、いくらアメリカといえど諜報活動は行わないでしょう。一方、韓国の順位はかなり上位です。韓国は北朝鮮や中国と関係が深く、両国に関する様々な情報が集まります。また、親北・親中の左派から大統領が生まれると反米的な志向が強くなります。アメリカとしては政権内部の実像を把握する必要があります」

 諜報活動は一度止めてしまうと、再開には時間がかかる。今の尹政権は保守派で親米路線だが、それでも盗聴などの活動は継続される。

「アメリカにとって韓国での諜報活動は比較的、容易です。例えば協力者が見つかりやすいのです。旧KCIA(大韓民国中央情報部)は、アメリカのCIA(中央情報局)と密接な関係を持っていたことで知られています。現在の韓国政府は国家情報院が諜報活動を担当していますが、アメリカ政府との太いパイプは変わっていません」(同・山田氏)