0001きつねうどん ★
2023/04/27(木) 07:48:08.14ID:5IL2pbAf室井佑月
作家・室井佑月さんは、先日行われた地元の県議会議員選挙を振り返る。
* * *
県議会議員選挙が終わった。私の住んでいる地域では、定員6人の枠に8人の候補者が立った。野党系候補は、最下位で無所属の1人しか当選しなかった。
私の住んでいる地域は、政治とカネの問題で騒ぎになった場所だ。2021年の衆議院議員選のとき、自民党の古参の県議が、自民党の衆院議員に金を強請(ゆす)ったのだ。それは全国的に大問題となり、その県議は党を辞めさせられた。その後の選挙だった。
この結果をどう捉えるべきだろう。結局、多くの人は、政治なんて興味がないのかもしれない。
いいや、もしかすると、今の生活が満足で、なにひとつ変わることが嫌なのか。
いやいやいや、この30年間、私たちの賃金は上がらず、物価は高くなった。生活が苦しくなった人は増えた。じわじわと、変わってはいっているのだ。
私は与野党議員のバランスが取れ、各議員が毎回自分の選挙に不安を持ち、私たちを丁寧に扱ってくれることを望む。なので、野党側を応援している。
毎回、毎回、良い勝負だったともいえない勝負がつづく。そのたび、投票率が低かったから、そう言い訳をしてきたのだが……。
最近は、その考えが違うんじゃないかと思えてきたところだ。
多くの人が政治に関心を持ち、投票率が跳ね上がっても、多くの人が野党側に投票するとは限らない。
与党側は予算の采配ができ、数々の利権を持っているから強い、という人もいる。
が、利権の恩恵を受けている人より、受けてない人の方が圧倒的にその数は多いはず。
それに人は、本当に変わらないことを望んでいるのか?
たとえば、日本は平和国家でありつづけているし、憲法改正だってしていない。
憲法9条により、軍隊は持たず、海外で武力行使しないことになっていた。専守防衛で、国を攻撃されなければ、外国を攻撃することもできなかった。
しかし、圧倒的に人気だった安倍政権からその解釈を変え、米軍とともに自衛隊は海外で戦えることになったし、外国の基地などを先制攻撃できることにもなりかねない。
いつの間にか、この国が変えられた。政府与党、自民党が我々に説明もせずに変えた。
そういう大きな変化にも、私たちは鈍感だった。
もしかすると、私たちは変わらないことを望んでいるのではなく、変えられない結末に突っ込んでいってるのではないかとさえ思えてきた。崖から集団で海に飛び込む物語のネズミのように。それなら少し、意味がわかる。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2023年5月5-12日合併号
https://dot.asahi.com/wa/2023042600011.html