志葉玲フリージャーナリスト 4/27(木) 11:50
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20230427-00347185

 正に「血も涙もない」とはこのことか。現在、国会で審議されている入管法改定案*1によって、強制送還の危機にある難民の子ども達が24日、都内で記者会見を行い、「日本にいたい」「人間として扱って」と訴えた。だが、関連する国会質疑の中で、出入国在留管理庁(入管)の西山卓爾次長の答弁は、日本が締約している国際条約や、子ども達の未来、命すらも何とも思っていないような、異常さが際立つものであった。

〇小学生から高校生の子ども達が会見
 政府与党が今国会で成立を目指す入管法改定案では、「送還忌避者」、つまり、強制送還を拒む外国人を減らすためとして、迫害を受ける恐れがあるところへの強制送還が国際条約等で禁止されている難民認定申請者に対しても、例外規定を設けるとしている*2。こうした中、難民として逃げてきた親と共に幼少の頃に日本に連れてこられたり、日本で生まれたりした、小学生から高校生までの9人の子ども達が、24日、参議院議員会館で会見を行い、在留が認められないが故の苦悩や、強制送還への不安を訴えた。

 この子ども達は全員、トルコ籍のクルド人で、親が難民認定申請しているものの、「難民鎖国」とも批判される日本の難民認定率の低さが壁となり、いずれも認定されておらす、強制送還の危機にある。子ども達やその親達のほとんどは、現在、入管庁によって「在留資格」が無いとされており、「仮放免」という扱いだ。つまり、入管の収容施設外での生活が一時的に許可されているかたちだが、アルバイト含め就労は許可されず経済的に困窮する上、住民票もないので、国民健康保険に加入できず、医療を受けることも困難だという。

 会見で発言した中学2年生の少女は「妹が2歳の時、39度の熱が出たのに病院につれていけなかった」「同じ人間なのに、なぜ病院にいけないのか。そのことが本当に嫌で、悔しかったです」と語った。

 同じく会見で発言した高校2年生の少女は「勉強を頑張って、成績優良者として認められた」「大学進学も希望している」と語るが、入管法改定案に大きな不安を感じていると言う。「日本でかなえられそうな夢も、トルコに行ったら、ゼロどころかマイナスから始めないといけない」(同)。

〇西村入管庁次長の人間味の無さ
西山卓爾入管庁次長 衆議院インターネット審議中継より
 こうした、子ども達の状況に対し、入管庁は恐ろしいまでに冷酷だ。今月17日の国会質疑で、本村伸子衆議院議員(共産)が、上述の高熱を出した2歳の幼児が病院に行けなかったこと等を例にあげ、「明らかに(子どもの権利条約の)生命、生存、発達に対する権利が保障されていない」と追及した。これに対し、西山卓爾入管庁次長は「我が国は締約・締結している、人権諸条約を誠実に履行しており、我が国の入管制度がこれに違反するものとは考えていない」と強弁したのだった。