戦略物資とは国家の安全保障上において重要な物資や資源のこと。それが不足すると通常の経済活動はもちろん、戦争など安全保障上の危機の際ににっちもさっちもいかなくなる、そんな物資のことです。

具体的な例を挙げると、石油やレアメタル・食料、最近だと半導体やタンポポなども含まれます。

…え?タンポポも含まれるのかって?

確かに、今はまだタンポポは戦略物資に含まれないかもしれません。

しかし、後数年もすればタンポポが戦略物資の仲間入りをする…。そんな未来が待っているかもしれません。

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その名もロシアタンポポ
タンポポはキク科タンポポ属の植物の総称で、日本には在来種のカントウタンポポやカンサイタンポポ、外来種のセイヨウタンポポなどが多く自生しています。

そんな多くのタンポポの全てが未来の戦略物資なのかというと、残念ながら違います。

タンポポはタンポポでも、カザフスタンやウズベキスタン、キルギスといった西トルキスタンの一帯に自生しているロシアタンポポが未来の戦略物資として注目されているのです!

なぜロシアに生えてないのにロシアタンポポなのか?
それは、これらの国がかつて現在のロシアを中心に存在したソビエト連邦の構成国の一つだったから。

和名が命名された当時はまだソ連だったため、ロシアタンポポとなったというわけです。

さてこのロシアタンポポ。なぜ戦略物資として注目されるようになったのでしょうか。

ソ連もナチスドイツもタンポポを研究していた
第二次世界大戦前後、ソビエト連邦やナチスドイツ、アメリカ合衆国がこぞってタンポポを研究していた時代がありました。

なぜかというと、とある戦略物資がロシアタンポポから生産できると判明したからです。

それは、戦闘機や爆撃機といった航空機から軍用車両や戦車までも広く使われ、しかも産出が一部の国々に偏ってしまっている戦略物資、天然ゴムです。

天然ゴムは、主に車両や航空機などに使われるタイヤの主原料の一つで、例えば日本は現在その調達を輸入に100%頼っている重要度の高い物資。現在でも戦略物資として備蓄をしている国もあります。

タンポポ研究に躍起になるワケ
そんな天然ゴムですが、原料はほぼ全てをパラゴムノキという植物に依存しています。

ちなみに観葉植物として人気のゴムノキの多くはインドゴムノキという植物。

どちらも幹を傷つけるとラテックスと呼ばれる天然ゴムの素となる白色乳液が採れますが、パラゴムノキはトウダイグサ科でインドゴムノキはクワ科と、両者はそこまで近い仲間ではありません。

それでもどちらもゴムの利用に使えるので、和名はどっちも〇〇ゴムノキと仲間かのような名前になっています。

ただ、繰り返しますが、現在天然ゴムの原材料はゴムとしての質が高く生産効率も高いパラゴムノキがほぼ全てとなっています。

そんなパラゴムノキは原産国がブラジルで、現在の主要産出国はタイ、インドネシア、ベトナムなど東南アジアなどの熱帯の国々。そしてこの状況は第二次世界大戦前後でも同じで、東南アジアに大きく依存していました。