自民党と公明党の対立が先鋭化している。次期衆院選で、公明党が希望した東京選挙区での候補擁立に自民党が難色を示したため、公明党が「東京での自民党候補の推薦拒否」を最後通告する事態となったのだ。自民執行部からは「連立を解消するつもりか」と激怒する声も聞かれるが、公明党の組織力に依存してきたため、推薦拒否が全国に広がれば、大物を含めた落選続出との懸念も強い。ただ、ピンチはチャンスでもある。日本を取り巻く安全保障環境が激変するなか、岸田文雄首相は党是である「憲法改正」を掲げて次期衆院選を戦い、「岩盤保守層」を取り戻すべきだという識者もいる。



「いかに厳しくても、公明党の応援がなければ『選挙は戦えない、勝てない』というのは思い違いだ。選挙は、日常の政治活動の結果。民意を反映させる努力を積み重ね、勝つための準備を徹底することが重要だ」「これまでも自公の対立はあった。協力することは協力する。できないことはしない。ケース・バイ・ケースが基本だ」

平沢勝栄元復興相=東京17区(葛飾区など)=は、夕刊フジの取材にこう強調した。

支持者拡大のため、平沢氏は散髪に行く理髪店を選挙区内で毎回変え、呼ばれた会合だけでなく呼ばれない会合にも行く。お葬式は万難を排して出席する。政界随一といわれる徹底した地元活動によって、初当選以来、公明党の応援を得ずに衆院選を9回連続で勝利してきた。

自公両党の東京での候補者調整をめぐっては、公明党が小選挙区定数「10増10減」で新設された28区(練馬区の一部)に比例東京選出の現職を立てる意向を伝達したが、自民党は蹴った。これを受けて公明党は25日、「28区の擁立断念」と「東京での自民党候補の推薦拒否」を伝えた。

両党には、それぞれ〝事情〟があるという。

盤石の組織力を誇った公明党だが、支持層の高齢化などで党勢に陰りがある。4月の統一地方選では過去最多の12人が敗北し、総得票数も前回統一選から約50万票減った。

公明党関係者は「危機感は強い。高齢化だけで割り切れる結果ではなく、『詳細な分析と引き締めが急務』との声が高まっている。とにかく必死だ」と焦りをにじませる。

一方、自民党内にも「10増10減のデメリットを受けるのは自民党だ」として、選挙区を譲ることに拒否反応がある。一部議員からは「LGBT法案を拙速に提出したのは、公明党の意向もある。憲法改正が進まないのも、公明党への配慮だ。連立解消がスッキリする」との声も上がる。

岩田温氏「自民と維新の二大政党制が現実味」

だが、推薦拒否が全国に広がり、衆院1選挙区あたり約2万票とされる公明党の組織票を失えば、自民党の大物を含む現職60人が落選危機という分析もある。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「軋轢(あつれき)はあっても、自公の依存関係は想像以上に深化している。安易な連立解消は困難だろう。対立を繰り返しつつ、妥協点を探るのではないか。気脈を通じた人材が不在のため、連立を維持するためのテコ入れが必要だろう。躍進する日本維新の会の存在感も両党に影響を与えている。自民党内には政策が近い維新との連携に期待する声もあるが、一筋縄ではいかない」と語る。