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迷い行者

 オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第140回は「迷い行者」だ。

 ある地域で山岳修行していた3人の行者がそのまま道に迷って、山の中で死亡した。その後、山には死亡した行者の幽霊「迷い行者」が錫杖(しゃくじょう)をついてさまよい出るようになった。

 迷い行者はこれぞという人を見つけ、後をつけるという。迷い行者本人たちは、里に下りる道を知らないのだ。そこでうっかり、迷い行者たちに後をつけさせたまま里に下りてしまうと、里で災いが起こるといわれている。

 災いをもたらすことで分かるように、彼らはすでに魔界の住人となっている。外の世界をさまよった魔人が里にさまよい出るのだから、これは疫病をまき散らしても何ら不思議ではない。迷い行者の存在そのものが疫病神そのものになっているのだ。

 また、迷い行者に後をつけられていることに気がついた場合、「私はアンタラと同じで、山の中で死んだ者じゃ。里に下りれると思って後をつけてもムダじゃ」と言えば後をつけて来ないという。このあたりは意外と素直である。

 しかし、本来は人々を救うために修行していた行者が魔界の使いとなって、人々を苦しめる存在になり果てるとはいささか悲しいものがある。 

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