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アメリカザリガニ(環境省提供)

アメリカザリガニはいかにして全国を制覇したか? 日本の河川のどこでも見られるアメリカザニガニ。日本全国に拡大していった力の源泉は、生存力の強さとされる。東北大と千葉大の研究で、遺伝子レベルで寒さへの耐性をつけたことで、寒冷地への侵出につながったことが分かった。侵略的外来種が、生息域を広げるメカニズム解明につながる可能性があるという。

全世界に拡大するアメリカザリガニは、高水温や水質汚染、低酸素などに高い環境適応能力を持つ一方で、低温に弱いと考えられてきた。北海道では温度の高い水域にしか生息しないとされてきたが、最近は零度に近い水温でも生存が確認された。

東北大大学院生命科学研究科の牧野能士教授は、千葉大国際高等研究基幹・大学院理学研究院の佐藤大気特任助教らと共同で、ゲノム配列や遺伝子の解析などを行ったところ、寒冷環境への適応に重要な役割を果たしたと思われる遺伝子群を発見した。

アメリカザニガニは低温下での生存に伴い、低温に適応した遺伝子の発現が増加し、発現が増幅されることで機能が強化されて低温に対する耐性を獲得している可能性がある。

札幌市、仙台市でそれぞれ採取したアメリカザリガニを実験室で飼育・交配し、その子供で低温に対する耐性を調べた結果、札幌市で採取したアメリカザリガニの方が生存期間が長かった。

今回の研究を足がかりに、侵略的な外来種が生息域を広げるメカニズムが解明されることが期待できるという。

環境省のホームページによると、日本に生息するアメリカザリガニは約100年前、米ニューオーリンズからウシガエルの餌として神奈川県鎌倉市に27匹(20匹との説も)輸入された。ウシガエルの養殖場が閉鎖になったことで、付近の河川に逃げ出し、人為的にも運ばれて全国に広がっていったという。

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