岸田文雄首相が大阪・関西万博の「かじ取り役」になることを宣言した。8月31日、岸田首相は官邸に大阪府の吉村洋文知事、大阪市の横山英幸市長ら万博関係者を呼び、緊急の会合を開いた。岸田首相はあいさつに5分間使い、準備が遅れている点について、「厳しい状況」「危機感」「楽観できない」などと何度も指摘し、「自らが先頭に立って進める」と強調した。大阪に、維新に任せてはおけない、というメッセージとも取れる。

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 この日の会合については、前日の夕方にメディアに告知された。そして、岸田首相が出席する会合としてはかなり異例のフルオープンだった。

「万博のパビリオンの建設などがかなり遅れていることについて、岸田首相がヤバイと認識したのは7月末くらい。日本国際博覧会協会、大阪府、大阪市に聞いても万博開催が予定通りなのか返事がなかなかこないから、岸田首相が業を煮やしてこの日に緊急の会合を入れたんです」(官邸関係者)

■胸突き八丁の状況

 岸田首相はあいさつの冒頭から強めの表現を使い、危機感をあおるかのように話した。

「さまざまな課題が生じています。万博の準備はまさに胸突き八丁の状況にあります」

「極めて厳しい状況に置かれていることを直視し……」

「まずこの危機感を政府、大阪府、大阪市、万博協会、そして経済界が共有するための」

 いつもは「検討する」「対応します」などとにごす言葉が多い岸田首相が、はっきりとした厳しい言葉で伝えた。裏を返せば、現場である大阪府や大阪市に危機感がない、と言っているともとれる。

 そして再び、

「会場建設及び海外パビリオンの建設について楽観できる状況にはありません」

 と危機感を強調した上で、

「意思疎通をさらに強化」「契約締結に向けた取り組みを加速していく必要」「施工環境の改善にも取り組んでいく必要」

 などと足りていない点を列挙し、

「大阪府、大阪市の協力が不可欠な課題」

 と“名指し”で訴えた。

 こうして、あいさつの最初から中盤にかけては、「このままでは開催が危うい」といった危機感を何度もあおるとともに、現実的な課題を突きつけ、改善点を示した。

 そして、具体的に政府主導の動きに言及したのは後半だ。

■最高幹部を協会に送り込んで協会掌握へ

「万博の準備を円滑に進めていくためには、博覧会協会の体制強化が必須です」

 と述べ、

「これまで60名近くの職員を政府から派遣していますが、このたび財務省、経産省から局長級の派遣を始め、各省が要所要所に幹部を派遣することといたします」

 と説明した。

「局長級」といえば、中央省庁では、事務次官、審議官に次ぐナンバー3の立場だ。

 こうした最高幹部を送り込むということは、表現こそ「オールジャパン一丸となって」「関係者一丸となって」などとやわらかい言い回しをしているが、要は「政府が完全にコントロールする」と言っているのに等しい。

 そしてあいさつの最後に、その政府のトップたる岸田首相が、

「私も政府の先頭に立ちます」

 と語気を強め、出席者に「ご協力を」と言って締めくくった。


9/2(土) 14:36配信   AERA dot.
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