専守防衛に反するとの指摘がある安保関連3文書の閣議決定や、自衛隊の南西シフトを受けて、沖縄では全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が発足、24日にキックオフ集会が開かれた。11月23日に那覇市内で1万人規模の県民大会を開き、党派や世代を超えた全国的な運動を目指す。沖縄発の平和運動に、首都圏から呼応する動きも始まっている。(宮畑譲、安藤恭子)

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「頑張ろう」を三唱し、気勢を上げる参加者たち=24日、沖縄県沖縄市で(宮畑譲撮影)

◆防衛強化が進む沖縄 「捨て石」にされた過去
 会は60以上の市民団体などで構成。沖縄県沖縄市で開かれたキックオフ集会には約800人が集まった。共同代表で前南城市長の瑞慶覧長敏さんは、「戦争をさせないという1点で集められた会。11月以降も集会を重ねていく。沖縄だけでなく、県外、世界との連帯を深めて平和を発信していく」と決意表明した。

 昨年12月に閣議決定された安保関連3文書は反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有などを明記。2016年の与那国島を皮切りに南西諸島の島々に陸上自衛隊駐屯地が開設され、奄美大島、宮古島、石垣島にはミサイル部隊も配備された。

 沖縄では、中国脅威論や台湾有事の想定そのものが「日本政府や本土中心の議論ではないか」との不信感も根強い。本土防衛の「捨て石」とされ、多くの犠牲を出した78年前の沖縄戦と重ねる県民は少なくない。

 共同代表の具志堅隆松さんは「相手を攻撃できる基地があれば攻撃の対象になる。本土の人は、台湾有事が起きれば地域紛争で終わらないことを想像してほしい。沖縄に配備されたミサイルを撤去してほしい。そうでないと私たちの生存が危うくなる」と訴える。

◆「全国の問題としないと解決しない」
 組織の運営に若い世代も多く携わる。集会で司会を務めた平和ガイドの平良友里奈さん(35)=南城市=は「基地の反対運動は争いがある怖いものというイメージもあったが、この状況で若い世代が参加しないのはまずいと思った。11月に向けて、多くの若い人が参加しやすいきっかけ作りをしたい」と語った。

 首都圏の人々も動き始めた。瑞慶覧さんを招き10月に横浜市内で講演会を開く「島ぐるみ会議と神奈川を結ぶ会」の深沢一夫さん(70)は「沖縄を再び戦場にしない、という危機感を、基地県の神奈川でも共有したい。日本の軍備増強の話であって、全国の問題としないと解決しない」と話す。横浜港の米軍「横浜ノースドック」には、小型揚陸艇部隊の配備計画がある。「南西諸島などへの物資輸送のための部隊。自分ごととしてつながっている」

 沖縄の県民大会 米軍統治下の土地をめぐる闘争に始まり、戦後の沖縄では、民意が政治に届かない状況への抗議運動として政治信条を超えた県民大会が開かれてきた。

 1995年の米兵による少女暴行事件では県民大会の怒りが世論を動かし、米軍普天間飛行場返還の日米合意につながった。沖縄戦の「集団自決」の記述を巡る教科書検定に反対した2007年の大会は主催者発表で約11万人が集結した。

 前泊博盛・沖縄国際大教授(日米安保論)は「県民大会で直接意思を表明するという状況は裏返せば、民意が反映されない日本の政治や民主主義の貧困を示している」と指摘する。

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