9月上旬、東京・霞が関。その建物の自動ドアには赤い文字で「閉鎖中」と記された紙が貼られていた。忙しなく登庁した職員が足止めされ、しぶしぶ遠回りする。1932年建設の登録有形文化財「旧文部省庁舎」の朝の光景だ。

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旧文部省庁舎の出入り口が封鎖されたワケ
「旧文部省庁舎は今でも文化庁の施設として使われています。ただ、職員がいつも通っていた出入り口は、9月5日から当面の間、終日閉鎖されることになりました」(文化庁関係者)

 小誌は、文化庁を所管する文科省の会計課が4日、省内職員に送った“厳戒メール”を入手した。文面にはこんな不穏な言葉が躍る。

〈庁舎管理の徹底の観点から下記のとおり警備を強化することとしました〉

 だが、警備強化の詳しい理由は記されていない。社会部デスクが解説する。

「明らかに統一教会(現・世界平和統一家庭連合)対策です。契機は、3日に『政府が統一教会の解散命令を請求する方針を固めた』と報じられたこと。解散命令請求に向けて教団を調査しているのは文化庁宗務課です。教団側からの意趣返しを危惧しての対応でしょう」

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セキュリティゲート通過が必須に

中でも厳重な警戒で守られている人物は…
 その対象はメディアにも。

「記者が取材で職員を庁舎内で待ち構えることがあるのですが、それも省側から『やめてくれ』と」(同前)

 中でも厳重な警戒で守られているのが、

「事務方トップの合田哲雄次長です。警察が出退勤時に警護し、自宅周辺も見回りをしているとか」(同前)

 確かに、週刊文春が今年5月4・11日合併号で180分に及び合田氏を取材した際も、当初自宅を訪れた記者は門前払いされ、関係者経由での身分照会を受けた後に庁舎での取材を許可されるという“超厳戒態勢”だった。合田氏は当時、

「(自宅に来た記者を)統一教会の方だと思った」

 と語っていた。週刊文春は再び合田氏への取材を依頼したが、断られてしまった。

教団側の『資産隠し』が危惧される
 解散命令請求が出るのは早くて10月とみられるが、実はあまり悠長に構えていられない事情もある。全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士の指摘。

「1年から3年かかるとされる裁判所の審議を経て解散が相当と認められれば、その時点で清算手続きに入り、財産が保全される。しかし、その前に教団側が資産を海外に送金するなどして『資産隠し』をすることが危惧されています」

 教団は本部のある韓国への送金は取りやめていると主張するが、送金先は他にもある。週刊文春は今回新たに、ワシントンDCの控訴裁判所が2022年8月に下した判決文を入手。そこには、日本の統一教会が、米国を拠点とする関連団体・UCI財団に対して長年にわたり年間約1億ドル(約140億円)を送金していたと認定されている。

「事実無根」と資産隠しの指摘を教団は否定
 一方、解散命令請求をめぐっては、こんな動きが。家族による高額献金の被害者である橋田達夫氏が憤る。

「信者の家族から聞いた話では、教団側は信者に『解散命令請求は出ません』と断言し、『テレビは見ないように』と言っているようです。不都合な情報に触れさせないためでしょう」

 教団に確認すると、資産隠しの指摘は「事実無根」、解散命令請求が出ないなどと信者に伝えていることは「事実ではない」と答えた。

 文化庁の閉鎖が解かれるのはいつになるのか。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年9月21日号)

https://bunshun.jp/articles/-/65971