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 福島第一原発の処理水放出から1カ月が経った。放出前~現在の韓国の反応について、テレビ朝日ソウル支局の河村聡記者に聞いた。

━━処理水放出が決定してから実際に放出されるまで、韓国での報じられ方や反応は?

韓国でも大きく伝えられていた。特に放出が近づいた今年の春ごろからの報道は“日本国内以上”と言えるかもしれない。

大きな構図でいえば、「IAEAの判断を尊重する=放出を容認する与党」と「不安を煽り、政権攻撃の材料にする野党」という形であり、ソウルの街中どこに行っても双方が横断幕を張って大々的にアピールしていた。

━━双方、どのような主張をしたのか?

まず野党は「核汚染水(処理水)の放出で我々の海が汚される」「海はゴミ捨て場じゃない」などと日本に対する批判を展開していた。さらに日本政府を容認する韓国政府や大統領に対しても「どこの国の政府なんだ」と攻撃。

それに対し与党は「ありもしない怪談・作り話で不安を煽っているのは野党だ」と反撃していた。

━━先月24日からの処理水放出時はどのような動きがあったか?

当日は朝からずっと各局が福島から中継で伝えると共に以下のような騒動もあった。

・韓国にある日本大使館前やソウル中心部でデモが相次ぐ。大使館には抗議をしていた大学生が乱入して逮捕者も
・環境団体による日本旅行や日本ビールの不買キャンペーン
・最大野党「共に民主党」李在明代表がハンストに突入

しかし、「放出後数日間がピーク」だった。

こうした過激な動きはニュースにはなりやすいが、一般の韓国人に広がっている印象はほとんどない。大使館前では連日デモが行われていたが2週間くらいするとほとんど見なくなった。

韓国ではパク・クネ元大統領を退陣に追い込んだ「ろうそく集会」のように抗議に一度火が付くと一気にダイナミックな動きになるが今回は大きな広がりとはならず、しぼんでいった印象だ。

━━中国は日本の水産物を輸入停止させ、イタズラ電話をしてきたりするなど多くの非難があった。中国と韓国の「差」はどこにあったのか?

韓国政府が大々的に「IAEAの判断を尊重する」と打ち出していたことが大きい。放出前には日本に専門家チームも送り、科学的検証を独自に行うとともに、放出2カ月前からは平日は毎日記者会見を行って処理水への情報提供を続けた。さらに、フェイクニュースやデマへの対応もかなり積極的にやっていた印象だ。政府が先頭に立って反対運動を展開した中国とはここが決定的に違った。

━━中国では中国産も含めて水産物の売り上げが減っているという報道もあるが韓国は?

スーパーや海鮮系の外食業の統計を見ても放出前後では大きな変化はない。風評対策のために大規模なキャンペーンが始まっていたり支援の動きもあって、短期的な結果にすぎないが少なくとも懸念されていた大規模な需要減や価格暴落は起きていない。

━━野党の李代表によるハンガーストライキはどうなったのか?

韓国の最大野党「共に民主党」の李代表が放出から1週間後に「処理水をめぐる尹政権の対応に抗議する」としてハンガーストライキを開始。その後、19日目となる今月18日に体調悪化で搬送され入院。入院してもハンストを続けていたが、24日目となる先週末の土曜日にドクターストップで終了した。

━━この動きも大きなニュースになったのか?

実は韓国では国会議員のハンストは“よくある話”。だが「最大野党の代表が国会会期中に」となると極めて異例で報道も多かった。

ちなみに、24日間のハンストと聞くとびっくりするが、実際には韓国のハンストは一日中座り込みを行うわけではない。夜は家に帰るし、李代表の場合は公務もこなしつつだった。「本当に何も食べていないのか?」という疑問の声もあった。