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潮風にそよぐウツボ=2024年1月9日午前11時50分、高知県土佐清水市養老、笠原雅俊撮影

 「海のギャング」が新しい年の潮風にクルクル回る――。

 高知県土佐清水市でウツボの天日干しが最盛期を迎えた。トラ柄の着物をつるしているように見える光景は地元の真冬の風物詩だ。

 珍しいウツボの天日干しは、ジョン万次郎資料館(同市養老)近くの国道沿いの作業小屋で、田中登志さん(74)が続けている。大手建設会社を定年退職後に始め、もう13年になり、今では「ウツボの田中」と呼ばれているという。

 田中さんは早朝に船で海に出て、はえ縄漁でウツボをとる。凶暴で「海のギャング」と言われるが、氷水に放り込むとおとなしくなる。

 大きいもので長さ1・2メートル、重さ約3キロのウツボの体を割き、水で洗う。潮風を受けやすいように竹串を刺して広げて1日ほど干してできあがる。ひとシーズンに約300匹のウツボをつるすという。

 北風の強い日は風車のように激しく回る。つるしたウツボは、まるで宇宙人か妖怪のようにも見える。

 お遍路や観光で通りかかる外国人が「オー、スゴイ」と驚きカメラを向ける。寒くて晴れた日にクルクル回るほどおいしくなるという。ウツボはコラーゲンが豊富で、焼いたり唐揚げにしたりして味わう。

 田中さんは「ウツボ漁を始めたころは、指をかまれて痛いこともあった。今ではウツボがかかったときにグイグイと引く感覚がたまらないね。ウツボの季節はわくわくして楽しいよ」と話す。

 1匹千円から3千円で直接販売している(通信販売はしていない)。ウツボの天日干しは3月いっぱい続く。(フリーライター 笠原雅俊)

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