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公式サイトからキャプチャ 

いま、アメリカの若い世代の間で「Dumb Phone(アホ携帯)」が人気になっている。アホ携帯とは、電話やメッセージ、アラーム、カレンダーなど機能が限定的な携帯電話のことだ。アメリカの人気ラッパーであるケンドリック・ラマーが、昨年11月に、シンプルなスマホの販売を手がけるLight社とコラボレーションし、アホ携帯「Linght Phone」を250台限定で発売すると、即日完売した。

アメリカ・ニューヨークでエンジェル投資家として活動する山崎美未(やまざき・みみ)氏によると、実はこのアホ携帯が若者の間で売れ始めたのは2~3年前からだという。もともとは、ガラケーを買う動きがあったが、デザイン性に古さが残る。そこでケンドリック・ラマーが、スマホのような見た目にし、販売したのだ。
人気の理由は「昭和・平成レトロブーム」と同じ
アホ携帯が売れるのはなぜなのか。山崎氏は3つの要因を挙げる。

一つ目の理由は容易に想像がつくかもしれないが、スマホ中毒からの脱却だ。最小限の機能に終始する携帯電話を持つことで、何時間もSNSなどに時間を費やすことがなくなる。

アメリカの調査会社、カウンターポイント社のレポートでも「Z世代とミレニアル世代が抱くスマホとSNSがもたらす精神衛生上の懸念から、米国市場ではフィーチャーフォンが復活している。台数の伸びは大きくないかもしれないが、デジタルデトックスとしてフィーチャーフォンを求める消費者の需要は続くだろう」としている。

次にプライバシーの懸念。GAFAを中心としたビッグデータを保有するIT企業による個人情報の取得を回避しようとする動きだ。山崎氏の友人で、米アマゾンAWSのAI部門に勤務している女性は、5年ほど前から個人情報保護を理由にSNSをほとんど使っていないという。「テキストがログとして残るのもイヤなのだとか。テクノロジー色の強い人ほど、SNSなどから距離を置いている印象です」(山崎氏)。

そして3つ目がノスタルジーだ。例えば日本では、1986年に発売されたレンズ付フィルム「写ルンです」や、1990年代後半に女子高校生の間で流行した「ルーズソックス」がときを経て再ブレイクする「昭和・平成レトロブーム」は定期的に起きる。それと同じ原理だと山崎氏は話す。

「例えばニューヨーク・ブルックリンは、若者のトレンドの発信地でもありますが、そこへ行くと山下達郎や竹内まりやといった1980年代や90年代の音楽がかかっているんです。そういう、自分たちが経験したことのない時代へのノスタルジーがあり、同じようにフィーチャーフォンを触ったことのない若者が、古い時代への郷愁からアホ携帯を手に取っているようです」
日本でもビジネスチャンス
以上の3つの要因を踏まえると、日本でも「アホ携帯」の需要はありそうだ。実際に山崎氏のXでのアホ携帯に関する投稿には、約2800人のフォロワーに対して230万インプレッションがついた。コメント欄には、「欲しい」「ガラケーかiPhone15か悩んでいたが、ガラケーにしようと思った」などといった声が寄せられ、メルカリCEOの山田進太郎氏も「興味深い流れ」と反応している。

「機能はシンプルで良いので、メーカーも製品を作るのは簡単なはずです。売れるかどうかはデザイン次第でしょう」(山崎氏)

大手キャリアが芸能人やインフルエンサーなどと組むことで、日本での新たな商機を開拓できるかもしれない。

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