現代美術家の大滝ジュンコさんは、新潟県北部にある山熊田という人口37人の集落で、マタギの夫と共に暮らしている。今年2月、その日々を描いた『現代アートを続けていたら、いつのまにかマタギの嫁になっていた』(山と渓谷社)を出版した。埼玉県出身で東京を拠点に活動していた大滝さんは、なぜ縁もゆかりもない山里に移住したのか。そこでどんな生活を送っているのか。(前編/全2回)

老人とマタギと熊しかいない村の生活
――そもそも山熊田で暮らしはじめた経緯を教えてください。

きっかけは10年前の秋です。山熊田の取材を続ける知り合いのフリーライターから「マタギと飲み会しようぜ」と誘われたんです。

試しに山熊田をGoogle earthで調べてみたら、完全に山で人が生活している気配がまったくなかった。面白そうと集落が主催する山登りイベントと飲み会に参加してみたんです。

実際に行ったら、最寄りのJR府屋駅から山道を30分走った終点にある山奥の村でした。当時の人口は50人弱。お店も学校も何にもない本当に小さな集落でした。

つづき
https://president.jp/articles/-/80572