0001きつねうどん ★
2024/05/16(木) 17:36:03.44ID:+SkImgY8※本稿は、若宮總『イランの地下世界』(角川新書)の一部を再編集したものです。
欧米にも中露にも中東にも不信感を抱くイラン
反米国家としてのイメージが強いイランだが、実際にはイラン人の多くが、われわれ日本人と同様に、米国、そしてヨーロッパの文化に対して、親しみと強い憧れを抱いている。とはいえ、19世紀以降は英国とロシア(ソ連)、20世紀に入ってからはこれに米国を加えた三大国の利害に翻弄され、なかばそれらの属国ないし半植民地的な地位に甘んじてきた歴史がある。
欧米諸国は、いったい誰の味方なのか――。イラン人の欧米観の根底に、こうした不信感が横たわっていることを見落としてはならない。
では、イラン人はどの国を信用の置けるパートナーと見なしているのか。
ご承知のように、イランの友好国はロシアと中国であるというのが、一応、国際政治の常識となっている。しかし、実際にこれらの国に対して一般のイラン人が抱くイメージは、欧米先進国よりもさらにひどい。何しろ中露両国は、今やイラン国民最大の敵ともいえるイスラム体制を、強力にバックアップしているのだ。
一方、イランと歴史的、文化的に近しい関係にある中東諸国との関係も、イスラム革命を境に大きく変容した。革命後のイランは、イスラムをイデオロギーに中東地域での影響力拡大を図ってきた。
とくに、パレスチナや、アサド政権のシリア、レバノンおよびイラクのシーア派組織、そして イエメンのフーシ派などが、イランの支援を受けていることはよく知られている。しかし、当のイラン国民はといえば、こうした国々に対して、ほとんど何のシンパシーも感じていない。反体制デモのたびに必ず叫ばれるスローガンのひとつ、「わが命、捧げたい! ガザでもレバノンでもなく、イランのために!」は、そのことを象徴している。
日本のアニメと“出稼ぎ労働者”の影響
一方、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)のような、経済発展著しいペルシア湾岸諸国に対しては、イラン人はかなり屈折した感情を抱いている。
同諸国の国力は、イスラム革命まではイランに大きく水をあけられていた。しかし、革命後、イランが反米に転じると、その対岸に位置していた国々は米国との関係を強化することで経済発展を実現、結果としてイランとの立場は完全に逆転することになった。
では、欧米も中露も中東諸国も嫌いなイラン人は、どの国が好きなのだろうか。これは客観的に言って日本である。イランが親日である理由はさまざまあるが、イランは付き合いの深かった国とは関係が悪化しやすい傾向にある。
ただ、親日である理由はそれだけではない。
イランでは黒澤明の映画作品や、『おしん』などのドラマがテレビで放送されていたこともあり、日本人の生活や文化に慣れ親しんでいる人も多い。そして、なんといっても大人気なのが日本のアニメだ。『千と千尋の神隠し』などの映画作品や、『ワンピース』や『呪術廻戦』などのテレビアニメは人気が高く、イランの若者たちはそれらの作品を違法サイトでダウンロードして楽しんでいる。
つづき
https://president.jp/articles/-/81554