>>185
――伸身ユルチェンコ3回半ひねり、いわゆる「シライ2」ですね。セオリーを捨てたとは?

手を突いたと同時に、縦回転とひねり(横回転)を同時に入れたんです。ひねり(横回転)を同時に入れると、縦回転の力が弱くなってしまいます。その分は、脚を宙返り方向(後方)にまわすことで補っていました。もちろん、精度を考えればセオリー通りが良いのは分かります。子供に基礎を教えるのであれば、まず縦回転をするんだよって教えます。でも3回転半は、基礎的なことを言っている暇がない。できるためには手段を選べない、人が邪道と言おうとも成功させないといけない、という信念がありました。そして成功させられれば、それが正しいということになるんですから。

――この「セオリーを捨てたアプローチ」というのは、第1回でお聞きした「4回半ひねり」と共通しますね。

羽生選手の4回転アクセルもやはり、新技です。間違い無く「ハニュウ・ジャンプ」と言えます。新しい技を作ってきた身からすると、この4回転アクセルというのは、いままでできていた技に少し足す、という考えだと、回転が間に合わない気がします。なので、体操と同じ考えが使えるかは分かりませんが、左肩を使って、踏み切りと同時に回転のモーションをかけはじめるやり方もあるかな、と。顔の位置も、4回転まではかなり右を意識していますが、4回転半だけは回転に先行させるほうが、回転が早くかかると思います。もちろんこれは体操の視点での意見ですが。