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毎日新聞 2021/11/16 20:53(最終更新 11/16 21:58) 有料記事 1678文字




 政府が16日にまとめた新型コロナウイルス感染症の行動制限緩和策は、需要低迷にあえぐ経済界の強い後押しが背景にある。対策のベースとなるのが新たに導入する「ワクチン・検査パッケージ」で、政府は感染対策と経済活動の両立に不可欠なツールと位置づける。しかし、社会経済活動の再開を急ぎたい政府の姿勢ばかりが目立ち、感染症の専門家には懸念の声もある。

政府、分科会に緩和策提示
 「感染リスクを引き下げながら経済社会活動の継続を可能とする、新たな日常の実現に取り組みたい」。16日の政府の新型コロナウイルス対策分科会で、山際大志郎・経済再生担当相はパッケージを使った制限緩和を進める考えを強調した。

 政府が分科会に提示した緩和策は緊急事態宣言の時にもこれを適用すれば、飲食店やイベントの人数制限などを除外する内容だ。パッケージは、ワクチンの接種証明か検査の陰性結果を示した人を、新型コロナに感染している可能性が低いとみなす仕組みだ。

 政府の緩和策に対し、押谷仁・東北大教授(公衆衛生)や尾身茂会長ら有志メンバーがパッケージの「留意点」と題した1枚の文書を分科会に出し、くぎを刺した。「ワクチン及び検査の限界」の項目では、接種から時間がたつと感染予防効果が下がる▽検査には限界があり感染者を見逃す場合もある▽パッケージを使っても感染リスクは残るため一定の感染対策は必要――と課題を列挙している。

 さらに医療の逼迫(ひっぱく)状況を示す5段階のレベルで、宣言など強い対策が必要な「レベル3(対策強化レベル)」の場合は、パッケージを停止するかどうか検討を求めた。尾身会長は記者会見で「場合によっては停止もある」と強調した。

 関係者によると、有志メンバーはこの文書を分科会の正式な議題として扱うよう申し入れたが、政府側に拒まれたという。交…

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