【ソウル=溝田拓士】韓国で3月9日の大統領選を前に、新型コロナウイルスの新規感染者数が10万人を超えた。与野党の候補は、 文在寅ムンジェイン 政権の数少ない実績の一つとされたコロナ対策への批判を強めている。

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 1日当たりの新規感染者発表が初めて10万人を超えた18日、文政権は規制の強化ではなく緩和に動き、午後9時までとしていた飲食店の営業時間を1時間延ばす方針を決めた。自営業者の経済的苦境に配慮した措置だ。ソウルでは中心部の繁華街、 明洞ミョンドン でさえ空き店舗率が5割に達する。

 自営業者らの団体は200人規模の抗議デモを行い、「損失を100%補償せよ」などと政権の営業規制への不満を訴えていた。

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 こうした状況を受け、左派系与党「共に民主党」の 李在明イジェミョン 候補(57)はフェイスブックで、「自営業者の苦痛を和らげるには物足りない」と政権批判を書き込んだ。遊説先でも「ワクチンの3回目接種者には午前0時まで営業を認めるべきだ」と持論を展開した。

 李氏は、11日のテレビ討論会で、文政権のコロナ対策を「不足がないわけではないが、よく持ちこたえている」と評価していた。感染の急拡大で世論の不満が広がる中、政権批判に転じたようだ。文政権の支持層に多い零細自営業者らも意識して、50兆ウォン(約4・8兆円)の補償策を掲げる。

 保守系最大野党「国民の力」の 尹錫悦ユンソクヨル 候補(61)は、コロナ関連の状況の悪化を「追い風」と捉えているようだ。尹氏は「国民の防疫協力を『K防疫』と騒ぎ立て、オミクロン変異株に対応する医療体制を整えていない」と政権を非難する。

 韓国ギャラップの最新世論調査によると、文大統領の支持率は37%と、政権末期としては、民主化後の歴代大統領の中で最も高い。支持理由で一番多いのはコロナ対策で、コロナが拡散し始めた2020年春、感染者の移動経路の把握を柱とした対策は「K防疫」ともてはやされた。だが、韓国メディアによると、現在、感染経路を把握できるのは全体の3割程度だという。

 専門家は、重症化しにくいといわれるオミクロン株の感染力を軽視し、旧正月連休前の先月中旬に規制を一部緩和した点などを「失策」と批判している。

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