なぜ企業の業績がここまで伸びているのか
マスコミでは、円安が大変という報道が溢れている。そこで筆者は、先週土曜日(9月10日)の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、円安はGDPを増やすので、必要な対策はやりやすいと話した。

これは、本コラムの読者であればご存じだろう。そもそも円安はGDPプラス要因なのは、古今東西、自国通貨安は「近隣窮乏化政策」として知られている。海外から文句が来ることはあっても、国内から止めることは国益に反する。以下のように、これは国際機関での経済分析からも知られている。

ざっくり言えば、10%の円安でGDPは1%程度高まる。その結果、税収増も望めるので、円安は抑えてはいけない。

もちろん、輸出比率が低く輸入比率が高い中小企業には逆風だが、大企業は逆に追い風である。そのため中小企業のマイナスを補ってあまりがあるので、GDPが増えるわけだ。中小企業には、増えた税収で景気対策を行えばよく、GDP増加要因の円安を抑えてしまっては元も子もない。

……という話をこれまでもしてきたが、実際、このことはデータでも示せる。

財務省が発表した2021年度の法人企業統計で、全産業(除く、保険・金融)の経常利益が前年度比33.5%増の83兆9247億円と過去最大となった。2022年4-6月分でも、全産業の経常利益は前年同期比17.6%増税の28兆3181億円と、これも過去最高だ。

営業収益も伸びているが、新型コロナウイルス禍からの経済・社会活動の正常化で業績回復が進んだからだ。経常利益が営業利益より伸びているのは、非営業利益の投資収益が伸びていることが理由だ。例えば、受取利息等は7兆3573億円で過去最高だった。

その主因は円安による海外投資収益の増加である。円安効果は輸出拡大という形でも現れるが、過去の海外投資収益という形でも表れる。

一般に現地生産に移行していると輸出増にならないので、円安効果は限定的と言われるが、現地生産なら海外投資を既に実施しているはずで、その場合には輸出増でなく海外投資収益増に替わっているはずだ。今回の法人企業統計では、その効果が強く表れている。

このままいけば、税収もかなり増えるだろう。経常収益がよければ、法人税収は当然伸びるが、給与所得も伸びるので、所得税収も伸びることになる。

円安と日本の国力は関係ない
マスコミはそれでも円安で不安を煽る。だから筆者は、税収増が期待できる以上政府が適切な経済対策を打つことは容易であり、それをしない政府を批判したほうがいいと、冒頭のテレビ番組で解説した。

時間があれば、経済音痴のマスコミは、為替の理解もデタラメであることも言いたかったが、無理だった。

昨今の円安を日本の国力と結びつけて、解説するマスコミやジャーナリストは多い。気取ってカッコをつけて話しているが、無知をさらけ出すだけだ。

本コラムではこれまで何回も書いてきたが、日米の為替は円とドルでどちららが相対的に多いか少ないかがポイントだ。多いほうの通貨は希少価値がないため安く、少ない方の通貨は希少価値が出て高くなる。これは、理論ではマネタリーアプローチ、実務経験則ではソロスチャートと同じだ。

1971年から50年間以上の歴史をみてみると、もっと面白い事実がわかる(下図参照)。最高値を付けたあとは少しリバウンドすることもありえるが、少し長いスパンで為替を考えるのにも歴史は役にたつ。

一部の期間を除いて、円ドルレートは、だいたい日本の円の総額と米国のドルのマネタリーベース総額の比率(円ドル比率)になることがわかるのだ。