私が獣医師免許を取得して動物病院で勤務し始めたとき、いろいろな驚きがありました。例えば、病院内では同僚でも皆が私のことを「先生」と呼びました。「そんな大それたものではございません」みたいな、むず痒い感じでした。そして最も驚いたことは、動物を一番苦しめる病気はがんでも腎臓機能低下でもなく、「生理的な排泄…つまり尿や便が出来ない」ことだったということ。

https://public.potaufeu.asahi.com/b018-p/picture/27128038/12dc1abc053855593d01281b721a8697_640px.jpg
この子がうちの便秘猫、ハクタロウです。保護されたとき、交通事故なのか虐待なのかはわかりませんが、骨盤骨折していました。そのとき心にも傷を負ったのか、いつもビクビクしています。それも便秘の原因です。

普段、皆さんは「よし!出すぞ!」などと特別意識することなく、「なんとなく出そうかな?」とぼんやり思ってトイレに入り、いろいろな筋肉の動きを意識することなく排泄されていることと思いますが、排尿や排便というのは、実はとても多くの神経や筋肉の絶妙な連携プレイで行われているのです。

それが、神経や筋肉その他の不調により、あるいは排泄路が物理的に塞がれてしまって、尿や便を出すことが出来ないということが起こります。一方で、生きている限り、食べものを食べる限り、尿や便は製造され続けますので、何日もでなければ体内でどんどん溜まっていき、悶絶します。これが原因で命を落とすこともあります。

私が新米獣医師のころ、元気食欲がなく、吐いている猫を診察した時のこと。腹部の触診で石のように…いや石以上に硬いちょうど大きめのサツマイモ状の塊を確認したので、神妙な顔で飼い主さんに「残念ですが、大きな腫瘍がお腹の中にあります」と説明してレントゲンを撮ったところ、それは腫瘍ではなくウンチだったことがありました!(一生忘れません!猫さん、サツマイモさん、ゴメンナサイ)

ということで現在、当院では何匹もの便秘猫チャンと向き合っています。

つづき
https://maidonanews.jp/article/14730475