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2021/12/24 11:53


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閣議に臨む岸田文雄首相(右)と林芳正外務相=24日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

24日に閣議決定した令和4年度予算案は既に成立した3年度補正予算とともに過去最大規模になり、「16カ月予算」は総額143・5兆円に上る。だが、緊急性に乏しい事業を査定が甘い補正に詰め込み肥大化したことは否めず、低成長が続く経済の活性化につながる期待は乏しい。国政選挙と新型コロナウイルス禍を言い訳に予算をばらまく「思考停止」が続くなら、日本の地盤沈下はさらに進む。

岸田文雄政権下で初めてとなる今回の予算は、首相が目指す「成長と分配の好循環」の実現を新型コロナ対策と並ぶ両輪に掲げた。

実際、処遇改善が遅れた介護職や保育士の賃上げ、困窮世帯や18歳以下への給付金など分配戦略では「岸田カラー」が垣間見えた。ただ、肝心の成長戦略は、補正予算の目玉だった10兆円規模の大学ファンドですら安倍晋三、菅義偉両政権で取り組んだ事業の拡充に過ぎず、目新しさはない。

予算が分配偏重でメリハリを欠いたのは、与野党が大規模な給付策を競った衆院選のあおりを受け、規模ありきで編成が進んだ影響が大きい。4年度予算案こそ新規国債発行額を2年ぶりに減らし格好を付けたとはいえ、35・9兆円に上る3年度補正予算を抜け穴≠ノして、来夏の参院選に向け大型事業を強調したい与党と、細かい査定を避けて取り分を増やしたい各省庁の要望が押し込まれた。

日本の平均賃金は欧米などがこの30年間で大きく伸びる中で横ばいを続け、先進国で下位の水準に落ち込んだ。日本人が真綿で首を締められるように少しずつ貧しくなってきたことへの危機感が、格差是正を重視する「新しい資本主義」の背景にあるのではないか。

だとすれば、政府・与党が最優先に取り組むべきは大半が貯蓄に回るとされる給付金ではなく、経済のパイを拡大し企業の賃上げ余力を確保する成長戦略だろう。コロナ禍の外出自粛で家計がためこんだ40兆円超の「過剰貯蓄」を消費につなげるような、創意工夫が求められた。規模だけが過去最大だと胸を張ろうと、成長に結びつかない予算なら好循環は実現できない。

(田辺裕晶)