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毎日新聞 2022/1/28 06:00(最終更新 1/28 06:00) 有料記事 2487文字




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牛乳を飲み干して消費を呼びかける鈴木直道知事(右)とホクレン農業協同組合連合会の西川寛稔副会長=北海道庁で2021年12月16日午後、米山淳撮影

 この年末年始、牛乳や乳製品の原料となる生乳が供給過剰から大量廃棄される恐れが生じ、政府が消費を呼びかける事態となった。結局、廃棄には至らず、関係者は「消費者の力が大きかった」と胸をなでおろす。そもそもなぜ“生乳危機”に陥ったのか。

「牛乳飲んで!」政治家も訴え
 「全国のみなさま ありがとうございました」。酪農・乳業の業界団体・一般社団法人Jミルクは今月11日、生乳の大量廃棄を回避できたと発表し、ホームページ上で感謝の言葉をつづった。事前の推計では、約5000トンの生乳が年末年始に供給過剰によって行き場を失う可能性があったが、飲用牛乳需要の1割程度を占める学校給食の再開もあって事態はひとまず収束した。

 大量廃棄を回避しようと、政府は消費拡大へのPRに躍起となった。金子原二郎農相は昨年12月17日の記者会見で同席した中村裕之、武部新両副農相とともに飲むヨーグルトや牛乳を飲んでアピール。岸田文雄首相も同21日の記者会見で「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んで」と訴え、生乳の消費量が多い愛知県の大村秀章知事は同28日の記者会見でコップ1杯の牛乳を飲みほし、消費を呼びかけた。

コロナ禍が招いた危機
 今回の生乳危機は複数の要因が重なって生じた。もともと年末年始は冬休みにより学校給食向けの需要がなくなることに加え、帰省などで日常的に消費される牛乳の食卓での出番は少なくなる。新型コロナウイルス禍の影響で飲食店や土産菓子メーカーなどの業務用需要も低迷。一方、生産量(供給量)は堅調だ。業界は2014年に発生した深刻なバター不足を受け、乳牛の頭数や1頭当たりの乳量を増やす取り組みを進め、その成果が出てきていた。

 既にコロナ禍に見舞われていた一昨年の年末は感染拡大(第3波)による帰省や…

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