【ワシントン=中村亮】米国防総省高官は23日、記者団に対してロシア軍の一部がウクライナ国境まで5キロメートルの位置に迫っていると明らかにした。ウクライナ周辺に配置したロシア軍の8割が攻撃開始に向けた位置に移動済みで「最大限の臨戦態勢に入っている」と指摘した。

ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認し、平和維持を目的としてロシア軍を派遣することを決めた。

国防総省高官はロシア軍が同地域へ新たに移動したかについて「規模や位置はわからない。しかし移動したということが事実ではないと疑う理由はない」と述べた。米政権は親ロ派が2014年に実効支配を始めたころからロシア軍が同地域で活動しているとみているが、新たな移動が確認されれば「侵攻」が進んでいることになる。

高官は親ロ派支配地域や、ロシアが14年に併合したウクライナ領クリミア半島以外を念頭に、ロシア軍の一部はウクライナ国境まで5〜50キロメートルの距離にいると指摘した。「プーチン氏は大規模な侵攻に向けて完全に準備を整えている」と語った。「昼夜を問わずにいつでも侵攻を開始できる」と強調し、首都キエフが標的になる可能性にも改めて触れた。

ウクライナ周辺への部隊配置については「ほぼ100%完了したと分析している」と述べた。欧州安保協力機構(OSCE)を担当するカーペンター米大使は18日、ロシア軍がウクライナ周辺に最大19万人を配置したと指摘した。米メディアは21年12月初めに、米政府はロシア軍が最大17万5000人を集結させると分析していると報じており、想定通りの規模と考えているとみられる。

ウクライナが面する黒海ではロシアが20隻以上の艦船を配置したという。高官は「効果的にウクライナを包囲しようとすれば黒海の艦船は部隊を上陸させるだけでなく、海から標的を攻撃できることが重要になる」と話した。揚陸艦も配置されており、黒海から上陸作戦を実施するシナリオも排除しなかった。

国防総省高官はロシアが予備役の招集を検討していると説明し「長期的な目標を持っていることを示すものだ」として懸念を示した。ロシアがウクライナへの再侵攻について長期戦を視野に入れている可能性があると国防総省は警戒しているようだ。

ウクライナ向けの軍事支援をめぐり「オースティン国防長官は致死性のある、なしにかかわらずウクライナ軍に支援を提供する方法を探っていくと明確にしている」とした。ロシアによる攻撃が始まれば武器などの空輸は撃墜されるリスクが高まる。高官は「空輸が不可能になれば別の方法がある」と強調した。

日本経済新聞 2022年2月24日 3:01 (2022年2月24日 7:41更新)
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