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日本の家庭料理「きんぴらゴボウ」(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 特徴的な風味を持つゴボウ。キク科の植物で細いトゲのある花を咲かせますが、私たちが食べているのは根の部分です。古くから食用としてきた国や地域は珍しく、さまざまな料理に使用されるのは日本特有の食文化だといわれています。市場にはほぼ一年中出回りますが、旬は今の時期。その栄養価やアク抜きのコツなどを栄養士の和漢歩実さんに伺いました。

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「縁起物」としても日本の食文化に欠かせない食材
 ゴボウは平安時代の頃、中国から薬草として日本に伝来したとみられています。そうして日本でも、江戸時代には各地で栽培されて食べられていました。

 世界的にゴボウはハーブや漢方など薬草として用いられることが多いのですが、古くからその根の部分を野菜としてさまざまな料理に用いてきたのは、日本特有の食文化といえます。最近では健康志向の関心の高まりからアジアの一部で食べられるようになり、欧米でもヘルシーな野菜として注目を集めているそうです。

 きんぴらゴボウなど日本の家庭料理には欠かせない存在です。江戸の庶民の味とされていたドジョウの「柳川鍋」にもゴボウが使われています。土の中に長く根を張ることから「土台を固めて代々長く幸せに」との意味を込めて、縁起物としておせち料理にも。また、たたきや煮しめなど、ハレの日の食材としても使われてきました。

「大浦ゴボウ」は毎年、成田山の新勝寺に奉納されることで知られています。千葉県匝瑳市の大浦地区で栽培され、直径は最大で30センチ、長さは1メートルにもなる巨大なゴボウです。精進料理の縁起物として煮付けが有名です。

食物繊維がたっぷり ゴボウの栄養価
 ゴボウといえば、食物繊維がたっぷりな食材として知られていますよね。日本食品成分表2020年版(八訂)によると、100グラムあたりの食物繊維は5.7グラムです。

 そのうちの2.3グラムは「イヌリン」と呼ばれる水溶性食物繊維。血糖値の上昇をゆるやかにする作用が注目されています。また「セルロース」や「リグニン」と呼ばれる不溶性食物繊維も3.4グラム含まれ、整腸作用や動脈硬化の予防に期待されています。

 水分量は81.7グラムと多めな一方、エネルギー量は58キロカロリーと低め。「カリウム」「カルシウム」「マグネシウム」などのミネラルも比較的豊富な野菜です。

アク抜きのコツ 香りや旨味は皮に
 ゴボウを水にさらした時に出る色は「ポリフェノール」。アク抜きは、栄養成分や風味を損なわないという観点では、特に必要はないように思います。白く仕上げたい場合は酢水に浸しますが、15分以上浸すと硬くなるので注意が必要です。

 香りや旨味は皮に多く含まれています。皮は「サポニン」という成分が豊富で強い抗酸化作用があるので、こそげ落とす程度にしましょう。泥などの汚れはたわしなどでこすって落とします。アルミホイルを丸めて使うと手軽です。包丁のみね部分でこそげ落としても良いでしょう。