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セミの鳴き声、あなたの周りではいつから?=2020年8月、神奈川県三浦市で

 7月中旬から下旬にかけて、複数の読者から「今年はセミの鳴き声が少ない。なぜだろう」との疑問の声が寄せられた。声は、東京都世田谷区、調布市、川崎市高津区とさまざまな地域から届いた。東京都千代田区にある中日新聞東京本社(東京新聞)周辺では7月末から、せみ時雨が聞こえるようになったが、例年と何かが違ったのか。専門家に聞いてみると-。(須藤恵里)

 「驚くことでも何でもない」。日本セミの会幹事の林正美埼玉大名誉教授(昆虫系統分類学)はそう語る。「本来、7月下旬はセミの季節が始まったばかり。今年は多くの地域で6月終わりに梅雨が明け、非常に暑い日が続いたため、人間が勝手にセミの鳴く時期だと思って期待しただけ」。早過ぎる猛暑日の到来に、私たち人間が「夏本番」と錯覚したための勘違い、というわけだ。

 一方で、林氏は「もしかしたら、セミも真夏と錯覚して早めに土から出てこようとしたかもしれないが、その後に涼しくなった時期もあり、足踏みをした可能性はある」とも教えてくれた。

 林氏によると、セミが成虫になる過程には、さまざまな要因が複雑に影響を与える。例えば土の温度。温度と言っても1、2日暑い日があるからといって成長が速く進むわけではなく、温度の積算量で成長の進行度合いが決まるという。ほかにも雨量や湿度なども影響する。

 今年は梅雨が短く、雨量も少なめだった。雨が少ないと木の成長が悪く、地中で木の根から栄養を吸って育つセミへの影響も考えられるという。林氏は「セミは地中で5~6年かけてゆっくり育つ。さらされる環境は毎年異なり、近年の不規則な気象の影響は未知数。みなさんも観察してみてほしい」と呼びかけた。

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