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世間ではあまり知られていないガチ中華も。写真はアヒルの首の肉(写真:筆者撮影)

ガチ中華ブームの一方で、世間ではあまり認知されていない中華料理がある。その名は「滷味(ルーウェイ)」。アヒルの首肉やモツなどを、八角や花椒(ホアジャオ)などの香辛料と醤油などで煮た食べ物だ。

唐辛子や花椒などがたっぷり入った真っ赤な四川料理などは、見た目が映えるためテレビなどのメディアでも取り上げられやすいが、滷味は店が増えているにもかかわらず、その見た目の地味さや不気味さから扱われることが少ない。

滷味は中国各地で冷菜やお酒のつまみとして食べられており、中国人が好んで食べる料理の1つだ。今回は東京近郊で滷味を提供する店が増えている理由について紹介する。

ガチ中華料理店では定番メニューの滷味
近年、滷味の店が目立つようになってきたのが上野のアメ横だ。アメ横を歩くと店頭に『千と千尋の神隠し』の映画に出てくるような茶色い料理が並ぶ店が目にはいる。豚足や丸鶏、アヒル肉などを漢方で茶色くなるまで煮出したこれらの料理が滷味だ。


上野アメ横でも売られる滷味(写真:筆者撮影)
コロナ前からこうした滷味を出す店は存在していたが、コロナ禍以降その数は増えつつある(台湾にも滷味と呼ばれる料理があり、薬膳スープで煮る点は似ているが、こちらはおでんのような感じで少し異なる)。

2020年には池袋や新大久保などにも店を構える滷味専門店「小魏鴨脖」が、今年になってからは池袋にも店を出す「東北王燻醤」がオープンした。そのほか、現地の屋台感あふれる「平成福順」や「天天楽」などでも滷味を販売している。

アヒルの首(鸭脖)や鶏脚(鸡爪)などは不気味な見た目をしており、敬遠してしまいそうだが、八角やフェンネル、シナモン、唐辛子、花椒などの香辛料をたっぷり使って煮込まれた肉にかじりつくと、ついついビールが進んでしまう最強のおつまみになる。

アメ横でも滷味を売る店の前を通ると、お酒のつまみにアヒルの首肉にかじりついている人を見かける。

近年、都内や周辺地域では滷味以外にも、中国現地で食べられるような、いわゆるガチ中華料理店が増えている。こういった店が増えている原因として、コロナ禍で閉店した飲食店の跡地に中国人がコロナ禍をチャンスと捉え店を出していることが挙げられる。

調理が楽で原価も安い
その中で滷味が増えている理由として挙げられるのが調理の簡単さと、原価の安さ、日持ちの良さである。

滷味は何種類ものスパイスや醤油、酒、砂糖などを一緒に煮出した「滷水」で豚足やアヒルのモツなどを煮て作られる。もちろん素材の善し悪しや、スパイスや調味料の配合によって味はかなり変わるので、店によって味の差は出やすいが、作り方としては単純だ。

最近上野で中華料理店を開いたあるオーナーは「滷味は作り方が簡単だから参入障壁が低いと思います。私も店をやるにあたり、最初は滷味の店を開くことも考えました」と話す。