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バフムトの廃墟の上でロシア国旗を振るワグネル戦闘員(5月20日公開の動画より) Press service of "Concord"/REUTERS

<バフムトを「完全制圧」と主張したばかりだが、まもなくウクライナ軍に包囲される?>

ロシアの民間軍事組織ワグネルは来週、ウクライナで「悲惨な状況」に直面するだろう――アメリカ欧州・アフリカ陸軍のマーク・ハートリング元司令官が21日、そんな見方を示した。東部の激戦地、バフムトがウクライナ側に包囲されているからだという。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年2月、「特別軍事作戦」の名の下にウクライナ侵攻を開始。短期間で勝利を収めるはずが兵士たちの士気の低さなどさまざまな問題に見舞われ、開戦後1年以上経っても戦いは続いている。中でも激しい戦闘が続いているのはウクライナ東部のドネツク州バフムトだ。

ワグネルは実業家のエフゲニー・プリゴジンが創設した。戦闘員の多くは元受刑者だ。バフムトでロシア軍とともに戦ってきたワグネルは、かつてはロシアの勝利の鍵を握ると見られていた。

バフムトを巡る戦況は数カ月間、膠着状態が続いていたが、ここを落とせばプーチンにとっては象徴的な勝利となるはずだった。だが激しい戦いの結果、どちらの勝利とも言いにくい状況になっている。

バフムート攻防戦はまだ終わらない
プリゴジンは20日、メッセージアプリのテレグラムに、ワグネルがバフムトを完全制圧したと投稿し、ロシア側の勝利を主張した。だがウクライナはこれを否定。激しい戦闘はまだ続いており、今後の形勢のカギを握っているのは自分たちだと主張した。

ウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は21日、ウクライナ軍は近くバフムトの「戦術的包囲」を行うと述べた。本誌はウクライナとワグネルのどちらの主張についても真偽を確認できていない。

ハートリングはウクライナの発表を受け、21日にプリゴジンに警告するこんなツイートを投稿した。

「われわれが何度も言ってきたように、プリゴジンもワグネル戦闘員もプロの兵士ではない」「エフゲニー、おめでとう。バフムトの中心に旗を立てたんだね。だが、その君たちは包囲されている」

また、ワグネルはここまで5カ月も酷い目に遭わされてきたが、また来週も酷い目に遭うだろうと述べた。

米シンクタンクの軍事研究所は21日、バフムトの一部地点がワグネルに制圧されたものの、いずれも「戦術的もしくは作戦上、重要な場所ではない」との見方を明らかにした。また、同研究所ではワグネルが勝利したという主張を裏付ける位置情報データは得られていないという。

一方でウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は20日夜、メディアに対し、ロシア軍とワグネルの部隊はバフムトの「すべてを破壊した」と述べたが、21日の記者会見で制圧を否定した。

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