高齢親はなぜエアコンつけたがらない?
 全国各地で35度を超える危険な暑さが続いている。稼働しない日がないというくらいエアコンは必需品になっている一方、どうしても使いたがらない人もいる。中でも深刻なのは高齢者だ。実際、エアコンの不使用で、熱中症による高齢者の死亡事故もしばしば起きている。なぜ高齢者はエアコンを使いたがらないのか――。

 そこには、物価高や電気代の値上げといった節約意識だけではない、彼ら/彼女たちの価値観も関係しているようだ。エアコンを使いたがらない高齢親の声に悩まされる子供たちの話から、背景や対策を探った。

筋トレはするけどエアコンはつけない
 40代主婦・Aさんは、実家で一人暮らしの70代の父親がエアコンをつけたがらないことに頭を抱えている。

「『危険な暑さだからエアコンつけてね』と何度も言っているのに、『体を冷やすと健康によくない』という理由で、エアコンをなるべくつけないようにしているみたいなんです。昔とは暑さのレベルが違うから、エアコンをつけない方がよっぽど体に悪いです」

 そんなAさんの父親は、「筋力が落ちて寝たきりになりたくない」という理由から、近所の公営のスポーツセンターで筋トレに励み、健康に気を遣っているそうだ。だが先日、Aさんは父親の“異変”に驚き、慌てて実家に帰った。

「最近、電話で『さすがに歳だな。“夏バテ”で食欲がない』と珍しく弱気な父が心配になり、片道3時間かけて実家に帰り、エアコンをつけてきました。寝たきりになることを心配する前に、熱中症で亡くなるリスクことを考えてほしいです。『お願いだから、エアコンをつけて!』と強めに言ってきました」(Aさん)

「我慢こそ美徳」という価値観
 金融機関に勤務する50代女性・Bさんは、暑さを我慢していることを自慢してくる80代の両親に呆れている。

「両親にエアコンを使うように言っても、『窓を全開にしていれば、自然の風が心地よい』『扇風機だけで十分』などと聞く耳を持ちません。しかも、熱中症で倒れた人のニュースを見ても、近所の人が救急車で運ばれても、『私は大丈夫』と謎の自信に満ちています。年齢を重ねると暑さを感じにくくなると聞きますし、不安です」(Bさん)

 Bさんはあるとき、「午前中は涼しいから」と言う両親に、昔のような暑さではないと説明した。

「今では公立の小中学校でもエアコンを設置している学校がほとんどで、昔のような暑さではないということを話したら、『いまどきの子供たちは暑さくらい我慢できないのか?』と怒っていました。親世代には『我慢こそ美徳』みたいな価値観があるのではないでしょうか」(Bさん)