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川崎市内で記者会見する女性(右)と師岡弁護士=2023年8月10日午後2時31分、和田浩明撮影

 インターネット上で継続的に差別的な書き込みの被害を受けているなどとして、川崎市在住の在日コリアン3世の女性が10日、横浜地方法務局川崎支局に対して、人権侵犯被害の申告をした。女性の代理人の弁護士は「現状はリンチ状態で、放置すれば新たなヘイトスピーチ(差別的動機に基づく発信)やヘイトクライム(憎悪犯罪)を生む」と述べ、早期の対応を求めた。

 申告をしたのは川崎市の多文化総合教育施設「市ふれあい館」館長の女性(50)。短文投稿サイト「X」(ツイッター)への書き込みなどの削除をプロバイダーに求めるよう要請したほか、投稿者に差別的な投稿を行わないよう指導することや、法務省による実態調査を求めた。また川崎市に対しても、ネット上のヘイトスピーチに非難声明を出すよう要請した。

 女性は「祖国へ帰れ」など差別的な投稿をした男性を相手取り損害賠償を求めて提訴し、係争中。これまでも裁判の口頭弁論などの度に、報道を引用した差別的な投稿で被害を受けたとして、川崎市に削除要請を申し立てたり、法務局に人権侵犯被害の申告を行ったりしてきた。

 今回の被害申告の対象は、7月20日に横浜地裁川崎支部で開かれた裁判の報道に関する投稿など472件と、複数の電子掲示板やまとめサイトなど。この多くで引用されたサイト「Share News Japan」は女性の代理人の要請を受け当該投稿を既に削除した。投稿の中には、アンケート形式で「一族ごと強制送還」を望むかと問うものもあったという。

 女性は10日の記者会見で、「法務局には早急な削除をお願いした。相談を受けた在日コリアンの若い人はネットの状況を見て、日本で生きていけるのかと悲観したり、自分のルーツは墓まで持って行くと絶望している。法務局などの今後の判断で若い人たちに希望を示せればいい」と話した。

 代理人の師岡康子弁護士は、差別的な投稿の多くが報道機関の記事を無許可で引用していると指摘し、「報道機関も著作権侵害で削除要請すべきだ」と訴えた。【和田浩明】

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