8月のとある白昼、新宿歌舞伎町の東京都健康プラザハイジアと隣接する大久保公園一帯は、すでに観光名所のようだった。まだお昼過ぎなのに道の脇にはポツン、ポツンと20代〜30代ぐらいと思われる女性たちが立ち、彼女たち目当ての男性たちも所在なげにそこここでたむろしている。

【画像】外国人客に3Pを持ち掛けた交縁女子。商談成立と思いきや……
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このエリアは通称“交縁”として、夜にもなれば多い時で50人以上の女性たちが立つ“街娼ゾーン”として、ここ1年あまりの間にすっかり有名になった。

「メディアでは風俗のフリーランス化ってよく言っているんですけど、ただ舞台が多様化しただけの話だと僕は思っています。昔はJKビジネスだったり、風俗や出会いカフェだったり、出会い系サイトで援交で体を売って稼いでいたけど、一番今稼げるスポット──舞台が”交縁”だっていうことなんです」

そう語るのは『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)の著者であるノンフィクションライターの高木瑞穂氏だ。『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』など、社会、風俗に関する著作で知られる高木氏は、20年以上前から何度も現在”交縁”と呼ばれるようになったこのエリアを取材している。”交縁”に関する情報があらゆるメディアに溢れている現在、今回あらためてこの場所の取材をしたきっかけは、知り合いの編集者に頼まれたからだという。

「ぶっちゃけて言うと、僕はこういう取材には飽きていたんです。 どういう子がいくらで売ってて、誰に貢いでいますみたいな、そういう記事だったら、やりたくないと。それでテレビのドキュメンタリーみたいに密着してみようということにしたんです。

もちろん、 立ち話をする程度だったら簡単にできますよ。でも、それ以上のことを聞くのは難しいし、本音を話すとは限らない。基本的にはウソばっかりなんですよ。そういう子が多いんですね。どう見てもそういうふうに見えないのに、キャバクラで元ナンバーワンだったとか、ソープで500万稼いでましたとか、そういうこと平気で言う子たちなんですよ。裏の取れないような、突拍子もないことを言う子はそもそも取材をしないし、話を聞いても書いていません。だから、この本には本当にリアルが詰まってると思います」

“交縁女子”の取材はただでさえ難しい。彼女たちにしてみれば取材を受けるメリットはまったくなく、むしろリスクしかないからだ。高木氏は本書で琴音という31歳の女性に1年間密着している。デリヘルにも在籍し、出勤すれば一日5万円を稼げるのにほぼ出勤せず、出会いカフェと“交縁”で稼いでいる女性だ。高木氏はもともと知り合いと一緒にいた時にお茶をしたことがあり、顔見知りだったというが、それでも密着取材は難航したそうだ。

「やっぱり難しいですよね、密着ってね。本にも書いたんですけど、約束は守らないし、『家から出られない』と取材をすっぽかす、あげくには取材自体もなしにしてくれって言い出すし、 まあ、すごく大変でした。でも、密着していくうちにわかってきたんですけど、それは単なる気まぐれではなかったんです」

つづく