日本の未婚化をデータで正しく解釈する
若者の希望と違った応援議論はなぜおこるのか
出産子育て期も夫婦ともに働き続けられる雇用環境の提供が最も重要(2023年9月)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=76059?pno=2&site=nli
天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所

国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」では、継続的に18歳から34歳の未婚男女の結婚意志についての回答状況が公開されている。(統計では初婚同士の婚姻届は、男性では8割以上、女性では9割以上が35歳未満のため)

2021年の最新調査結果でも、男女ともに結婚意志は8割を超えている。日本の若い男女の結婚への意思は激変していない

つまり「結婚意志は大きく変化していないのに、なぜこんなにも結婚希望が実現しなくなっているのか」を科学的に説明する必要がある

子育て期も夫婦ともに仕事を辞めずに働き続ける両立夫婦は、50歳以上の男女では10人に1人程度しか理想としていなかった夫婦像だが、女性は1997年の第11回調査(2023年現在44歳から60歳)、男性は2005年の第13回調査(2023年現在36歳から52歳)から両立夫婦を理想とする割合が2割を超え、2021年の最新結果では男性の約4割、女性の3人に1人以上が理想とし、最も人気のある夫婦像となっている

つまり、管理職層(50代以上・専業主婦志向)と若手層(20〜30代・共働き志向)では理想とする夫婦像が真逆なのである

日本において次世代人口である赤ちゃんを生み出す「結婚・初婚」は(日本は98%が婚内子として出生)、統計上では男女ともに26歳から27歳をピークとして、34歳までで「結婚」が行われている

つまり、34歳までの若い世代が最も理想とする「出産・子育て期も夫婦ともに仕事を辞めずに、ずっと働き続けられる雇用環境の提供」が、未婚化・少子化解消に極めて重要なのだ

日本は、今まで社会現象へのエビデンス(客観的事実)に基づく科学的なアプローチが無かったために、少子化が急速に進んでいる。科学的な思考が不足すると、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に対して疑問を呈する声が社会であがらなくなり、確証バイアスに基づく誤った解釈がいかにも事実であるかのように一般に広まってしまうのだ

近年、男女比率が揃うのは55〜60歳。現役世代は少子化で慢性的な男性余りです
人口動態として地方から東京へ、20歳前後の若年層女性の流出が続いています